フロウライト・シティ

猫市

氷星の微睡

 夜中から降った雪は街全体を真っ白に染めた。まだ夜明け前だというのにばたばたと音を立てる同居人に起こされ、無理矢理瞼をこじ開けて顔を上げる。

めい、何してるの」

「おはようはく!凍った星屑の採取!早く行かないと一等星取られちゃう!!」

 寝惚けた視線を向ければ紅玉ルビーの様な瞳が僕へ笑いかけて来る。艶のある黒髪は毛糸の帽子に隠されて見えない。そのほか耳あてやマフラーに手袋と完全防備の同居人は僕の問いかけに答えると籠を片手に下げて、駆け足で部屋を飛び出して行った。

 行先は街の外れにある星降りの森だろう。今日みたいな日は冷えて凍った星屑が雪と一緒に降って来る。同居人の目当ては星の形が綺麗に見える一等星だ。煮詰めてジャムを作っても美味しいけど、形が綺麗なものはソーダ水に入れて溶かしながら飲むのも楽しい。同居人の事だから質のいい星屑を採取してくるだろうと思いながら暖かい布団に埋もれる。

 やかましい同居人の影響を受けたらしい。再び眠りについた僕は白い雪を踏みしめて流星群の中を歩く夢を見た。

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