第2話なるほどの対話

「なるほどの対話」。これは平成14年に刊行された、河合隼雄氏と吉本ばなな氏との対談本である。

 もうずいぶんと前の作品なのだが、折に触れて文庫版を持ち歩いている。なので、もうボロボロなのだが、いろいろな所に線を引いて読み歩いている。

 この二人、生きにくさを抱えての人生を歩んでいるのだが、河合氏は臨床心理士として、ばなな氏は作家としてそれぞれ一流の仕事をされている。ちなみに河合氏はもう亡くなられている。

 二人の対話。魂についての語りなのだが、とても人間に対して、深い洞察と優しさをもっている。

 主にばなな氏の人生を振り返って、人としてどう生きるかを問うている。河合氏は臨床心理士の専門家なので、ほぼ聞き役である。でも、思ったことはズバッと言って、ばなな氏がなるほどとうなる。まさに「なるほどの対話」である。

 今の時代、人々は傷つきやすくなって誰かに安らぎを求めている。この本では、そんな時代の処方箋を提供して、人々の指針となる言葉をつむぎだしている。

 読んでいると温かいお茶を一口飲んでいるような、そんな和やかな雰囲気に包まれる。日々の潤滑油として、いつもこの本を持ち歩いている。

 普通と違うことをしたり、言ったりすること。そのことにもっと勇気を持とうと言ってくれる。まさに生きるための指針である。

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