第3話 誰?

「類、君は死んだはずなのになんで生きてるの?」

「ええ…。」

Q、好きな女の子に「なんで生きているの?」と言われた時の対処法(注:尚、僕の知らない指輪が薬指にはめられていると仮定する。)

A、多分嫌われています。なんなら彼氏がいます。彼女は諦めましょう。

「え、ええ…。」

「えー、って私のセリフだからね⁉︎」

 ムーッと心愛は頬を膨らましている。腕を組み、むむーっと唸った後にこう言い放った。

「だからね、類はもう戸籍上は死んだことになってるの。この前なんて私、類の骨だって拾ったんだから。」

「…は?」

 僕の骨を拾った?なんだか背中に寒気がした。僕が死んでいるというのは、心愛の嘘では無いのか?

「冗談…だよな?だって僕は今ここにいるんだ。」

「うん…、記憶だって私と同じで別人物が私と今喋っているなんて考えられないもん。」

 急に部屋の中が冷たい空気に包まれた気がした。戸籍上死んでいるということは、僕はここにいてはいけない存在となってしまったという事だ。突然、自分の存在に疑問を覚える。

「やっぱり、にわかには信じられないな…。疑うわけじゃ無いけど、証拠とかある?」

「証拠っていうか、これならあるけど。」

 そう言うと、心愛は胸元につけていたネックレスを外し、僕に手渡す。ペンダントのガラスの中には白い粉末が入っており、揺らすとサラサラと動く。まさか、と思う。

「…これは?」

「類の骨だよ。」

「……。」

 嫌な予感とは当たるものだな。

「証明書だってあるの。」

 心愛はスマートフォンを僕にグイと押し付けると、証明書の写真が写っていた。確かに本物に見える。母さんが死んだ時に見たものと同じだったから。偽物かもしれないが、今は信じる他ないだろう。

「…確かに死んでるな。」

「うん。でも類は今ここにいる。」

 心愛は僕の手を握ってきた。手の温もりがじんわりと僕に伝わってくる。

「類の手は今はちょっと冷えてるけど、あったかいよ。ここにいるってことが私の心を温めてくれるんだからさ。」

 僕の目をまっすぐに見つめて、だからね、と心愛は付け加える。

「類!生きててくれて、ありがとう!」

ぎゅっと、手を握る強さが強くなる。だから、小さく震えていることがわかってしまうのだ。

「ありがとうって…。」

 それは僕のセリフなのに。心愛に言われてしまった。僕の心も溶かされていく。もう、疑えない。あの指輪のことを聞こうと思っていたのに、急にそんな勇気は萎んでしまった。僕は、心愛を信じたいから。だから、僕は現実を見ていよう。

「僕がここにいるってことは、その骨は誰のものだ?」

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