目が覚めると、不気味な蒸気機関車の中にいた

トドキ

第1話

 「死にたい」


 どこかで聞いた覚えのある声に、僕はふと目を覚ました。その瞬間、僕はこれまでずっと終わりのない夢を見ていたことに気づいた、んだけど。周りを見渡した時、もっと絶望的というか、大事なことを理解したんだよね。


 ……ここどこ?



 定期的に聞こえてくる変な音に耳を澄ますと、「ポッポー」とかいって掛け声を上げてる汽笛の音が入ってきた。僕の足で踏んでいる床が、ガタン、ガタン、と下からの振動が伝わって踊るように揺れている。とりあえず、なんかの乗り物に乗ってることは理解。


 僕は座席に座っていて、周りにいる人たちも同じように、静かにそれぞれの椅子に座っていた。天井には花の形をしたいくつかの明かりがついていて、壁には大きな窓が張り付けてあった。まるで、明治時代の雰囲気。


 あ、これ、蒸気機関車だ……


 ードンー


 「わっ! 」


 突然、僕が乗っている車両が強く左右に揺れた。


 「なんなんだよ、もう! 」


 わけのわからない状況の中で、すこしだけいらだっていたからか、つい怒鳴るような声が出ていた。


 僕の隣には、二十代くらいの男の人が真顔のまま座っていた。いらいらしていても何も始まらないし、せめてここにいる人たちとコミュニケーションをとっておこう。ということで、僕は男の人に声をかけてみることにした。


 

「す、すみません。ちょっといいですか? ここがどこなのか、教えてほしいんですけど」


 なるべく控えめな声で、僕は言った。


 「ん? ここかい? そうだね……」


 そういうと、男の人は突然まるでたそがれるように、天井を見つめ始めた。そして目を細めて、明かりをぼーっと眺めながら、ちょっとだけため息をついて、こういった。


 「うん。どこなんだろうね? 実はね、私もそのことをずっと考えていたんだ。ここは一体なんなのかな? 私は何を待っているんだろう……」


 これだけ言って、彼はまたうつむいて、黙ってしまった。なんだかロボットと話しているみたいで、ちょっと怖い。


 ードンー


 すっかり動かなくなってしまった男の人から目を離すと、また大きな揺れが今度はもっと強くなって車両を襲った。僕は体が軽いし小さいから、思いっきり吹き飛ばされそうになった。ちなみに、そんな僕とは違って、さっきの男の人は石のように固まって、全く動じていなかった。


 いや、彼だけじゃなくて、この車両にいる人たちがみんなそう。まるで石。


 そのあとも、大きな揺れは何回か続いた……


 


 ーバタンー


 次から次へとなんなんだ?


 五回くらい揺れがなったとき、後ろの方で少し今までよりも小さな音がなった。今のは揺れというよりか、普通に扉が閉まったような音だった。誰か入ってきたのかな、そう思って、僕はちょっと音のしたほうを振り返ってみた。


 すると、背の高い、おっきな帽子に、黒い制服、まるで、電車の車掌さんみたいな恰好してる女の人がこの車両に入ってきているのが見えた。


 今まで見たこともないような絶世の美女で、思わず見とれてしまいそう。周りにいる人たちは、興味ないのかってくらい見る気もないみたいだけど。


 きれいな女の人は、ゆっくりと歩きながら、僕の方に近づいていた。


 


 


 


 


 

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