そこのもふもふ!俺の旅路の邪魔するな。

のの

第1話 いろいろと

「おい、いい加減にしろよ。」

 アランは、畑の真ん中で呆れていた。

今日は、ギルドの依頼で仕事をしている。


「おい、そこのモフモフ野郎!」


 モフモフ野郎は、ヘナという種類の魔獣で、名前はスタン。



 猫のような見た目で、人慣れしないと言われているが、産まれたばかりで親に見放されたのを拾ってからずっと一緒だ。

 丈夫な子だけが生きられる。

 自然界は厳しい。


 拾った時は、ダメかと思ったが。



 モフモフ野郎は、畑に現れた魔獣の子に追いかけ回されている。

この魔獣は、現在アランが滞在中のラシフィコ州に多くいるニゲルという種類の魔獣で、狼のような見た目で少々強面だが、仕事にも人にも忠実、狂暴な魔獣にも立ち向かう。

その為、ハンターが良く連れている。


 魔獣の子は、しっぽを最大限にフリフリして楽しそうだ。

 そして、モフモフ野郎は迷惑そうに畑に寝転び、が近寄るとパンチをするぞとばかりに手を上げている。


 スタンの子供だったころの貧相だった体は、ふっくらとして……

「嫌、太り過ぎじゃねぇ。」

 いくら毛足が長くふっさふっさだからって、フォルムが丸すぎだろ。



「……大きくなったなぁ。」

 アランは、仕方なく魔法で野菜の収穫を再開した。


 アランは、21歳になったばかりの青年だ。

 今は、薬草を探して旅をしている。

 モフモフ野郎は、スタン。

 この魔獣は、アランの生まれ故郷のシャグリ地方にしかいない。

 人慣れしないので、人と旅しているのはかなり珍しい。


 アランは、師匠の元で魔法を学び、多くの経験を積み、この若さでは、かなりの上級者になった。

 元々器用で、多くの魔法も取得しているが、今は、ゆっくりとスタンと一緒に楽しみながら旅をしている。


「スタさん、そろそろ帰るぞ。」

 アランは、振り返り収穫の終わった箱を見る。


「おい!毛玉!」


 野菜の入った箱が倒され、その前にはしっぽを振る魔獣の子としっぽを膨らませピンと伸ばしたスタンが向かい合っている最中だった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る