第9話 お嬢様、デートしましょうか

「お嬢様、今度の土曜日、空いてます?」

と魚住がスーパーの帰り道に普通に聞いてきた。因みに奴は軽い方のエコバッグを持ち、私は何故か重い方のエコバッグを持っている!


「学校が休みだから空いてるに決まってんでしょ!


ていうか同じアパートにいて聞かないでくれる?」

と言うと魚住は


「とりあえず空いてると言うことで…、じゃあ、デートしましょうか」

とスマホをいじりながら言う。


んん?


今、デートしましょうって言った?


ええ?デートしましょう?誰と誰が?


……。


もしや…わ、私のことかしら!!?

いや、私しか、この場に居ないし、魚住が霊感あって見えない何かと話してるんじゃないなら間違いなく私とデートしましょうって言った!!


な、何よ!魚住ったら!

やっぱり、この超絶美少女な私の事が好きで好きで好きでたまらないのね!?


ふふふ、私って罪な…、お…、ん…、な…!


と思っていたら、虫ケラを見るような目で


「可哀想な、お嬢様…。恋愛的なデートとしか捉えてないんですね?


最近じゃ、2人で出かけることがデートと言い、別に恋愛関係じゃなくてもデートと呼ぶんですよ?」

と魚住が言った。


「え?そ、そうなの?」


「そうなんですよー、だからこの誘いを勘違いして、


「魚住ったら!私の事が好きなのね!」

とか思ってたらぶん殴りますよ」


「怖っ!!じゃあ何で私をデートに誘うのよ!?暇なの?1人で出かけるの怖いとか?」


「違うわ!別に他の女でも良かったけど、


ほら、俺こう見えてもイケメンなんで、声かければデートしてくれる女子、たくさんいるんですけどね…」


何の自慢なの?


「まあ、一般の女子達が呪われたり、怖い目に遭わされたら、後々の処理が面倒だし、お嬢様なら、ぶっちゃけ呪われても大丈夫かと…」

と言うので流石にキレた。


「なんなのよ!?私は呪われても大丈夫とか!あんた、ほんとクソね」

と言うと魚住は


「まだ気付きませんか?実は姉が…、土曜日に、こちらに来るようなので」

と魚住が言い、私は青ざめた!!


「な、何ですって!?あ、綾さんが!?」

と震える!


「はい…。だから、お嬢様と仕方なくデートに誘ったのです…。因みにもちろん俺達が一緒に暮らしてるとかは秘密です」


「あ、当たり前じゃない!!そんなこと綾さんに知られたら!わ、私がぶち殺されるわよ!!」


魚住綾…。


魚住の姉でゆるふわ系の美人で、今はアメリカの大学に留学しているが…、弟の魚住に昔から…。じ、実の姉でありながら魚住に告白し、好意を持ち、ブラコンを通り越し、危ない橋を渡ろうとしている恐ろしい女で、魚住に近付く女という女を陰で排除してきた女だ!


この私ですら、小檜山の令嬢でなければ…、ビルから突き落とされてもおかしくない!!


「綾さんが…、こっちに帰ってくるなんて…、私はしばらくホテルにでも逃げるわ!荷物を纏めて頂戴!魚住!」

と言うと、


「それはできません。1年間の罰ゲーム違反になりますので」


「い、違反よりあんたの姉の方が恐ろしいわよ!!わ、私、絶対に殺されるわ!デートなんてしてる場合じゃないわ!!」


「この際、姉に俺を諦めてもらうチャンスで、このクソデート計画に耐えられるのはお嬢様しかいないと!!」


「ふっざけんじゃないわよ!!私を巻き込まないでほしいわ!


昔、綾さんに私がどんな目に遭わされたと思ってるのよ!!」

と言うと魚住は平然と


「姉さんとお嬢様が腕相撲して、お嬢様が手首やら指やら骨折させられて、お嬢様のマッサージを姉さんがして…、お嬢様は全身骨折とか?」


「あんたの姉さん怖いから!!あんな憎しみフルコースマッサージ二度とごめんよ!!異常だからね!」

とにかくデートはごめんだと断ると魚住は…


「焼肉です!実は、高清水くんから、焼肉の貸切券をもらいまして!!


さあ、どうします!?焼肉を食べれるチャンスですよ!お嬢様!」

と魚住は焼肉券をヒラヒラさせた!


ひ、卑怯だわ!焼肉と綾さんを天秤にかけるだなんて!やはりクソだわ!この執事!


くっ!


焼肉!綾さん!焼肉!綾さん!焼肉!焼肉!焼肉!焼肉!焼肉!焼肉!焼肉!


「や!焼肉うあうあいあいいいいあうあいいいいいいいい!!!」

と叫んでしまった!


「じゃあ土曜日!とりあえず別々に時間ずらして家を出て駅で待ち合わせという事で!


姉がたぶん駅から見張ってると思うんで」

と怖い事をさらりと魚住が言い、私は焼肉に屈した。


「…綾さんは怖いけど……。私は!焼肉を食べるわ!」

と瞳に焼肉熱がこもった。

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