第5話 お嬢様、友達いないのですか?

 とりあえず痩せて学校に復帰した私を見る皆の目に違和感。


 そう言えば、私は事故って入院してることになってたんだっけ?それにしても皆の目が信じられないと言う視線を感じた。


「おい、信じられねぇ!小檜山さんてトラックに轢かれて内臓飛び出したらしく、危篤状態だったけど、


 なんか凄え外科医のおかげで回復に向かい、意識を取り戻し、リハビリも恐るべき回復力で全快だってよ!」


「マジかよ!小檜山美玖、不死身のバケモノかよ!?」


「以前から人とはちょっと違うと思ってたけどよ」


「小檜山財閥は密かにバケモノの研究をしていて…、きっと何体も代わりを培養してるんだ!」


「小檜山財閥!やっべーな!!」


 おいこら、そこの愚民共!何ある事ない事言ってんのよ!変なドラマや漫画にでも影響されてるのかしら?



 そんなわけで私は自分の席に座り、1人で小説を読む。読書カバーは清楚な花柄だ。中身は…



 めっちゃくちゃBLだった。これがあれば孤独でも1人でも耐えられるんじゃーい!!



 私は静かにページを捲る。

 今日は攻めの不良な男子校生がついに冷徹クールな生真面目委員長を押し倒して愛の告白と接吻をし、想いが通じ2人は高みに!


 ああ、ええわあ。尊い!

 クラスのジャガイモ男子では想像出来ない。やはり創作物はええわあ。


 だがそこへ悪の執事、魚住が後ろから覗き込んで


「お嬢様…。くれぐれもリアルで俺を創造物に使わないでくださいね」

 と言う。


「ふっ、魚住…。想像は想像よ?人権なんてないの。無限大だから」


「そうですか、ならば止めません。


 その代わり、俺の友達がお嬢様を使い、想像することはお許しくださいね?


 想像は想像、人権などないのですから、いいですよね?」

 と言うので


「え?何?あんたの友達?え?

 あんた友達なんていたの?」


「はい、もちろんでございます。孤独で腐った脳みそのお嬢様。


 俺にはちゃんと友達がいます。百合専の友達が」


「ロクな奴じゃないわね。その友達とやらに私の創造無断使用はやめてほしいって言いなさいよ!


 どうしてもって言うなら、100万円払えってね」


「そうなんですか?じゃあ高清水に聞いてみますね」


「高清水?」

 ん?どっかで聞いたことあるような?


「高清水聖月くんです。お嬢様の昔の婚約者候補でしたが、辞退されたそうで」


「あら、そうなの?そんな人いたのね」


「それから俺とコミケで出会い、意気投合!


 ジャンルは違うけど、高清水くんは百合専で、なんと高校生作家デビューしてる本物のプロなんですよ!」

 と魚住が尊敬の意を込めて言う。


「は?ふ、ふーん。プロ作家…。ま、まあ、そんなのありふれてるわよね?ど、どうせ売れてないわよね」


「え?バカ売れですけど。


 しかもお嬢様モデルで売り出されて、百合界隈で人気沸騰!」


「ああーーん!?何勝手に人をモデルにしてんのよ!!


 高清水ボケコラカスが!!」

 と魚住のネクタイを引っ張ると、顔が近づいたので、遠巻きに見ていた魚住のファンの女子が勘違いして


「きゃあ!!や、やっぱりあの2人!デキテル!?」


「いやーん!魚住くぅーん!」


「お嬢様とイケメンな犬とはまた…」


 と勘違いするクラスメイト達。


「俺の嫁は、ミミたんなんで」


「死ねや、このクソロリヲタ執事が」


「という事で、お嬢様もさっさと友達を作るべきです。いいですよ、友達は。


 あ、俺は、お嬢様と友達とか、キモいから絶対に嫌ですけど!」

 と魚住は顔の前でペケを作る。


 こっちだってあんたみたいなクソ執事、お断りしますわ!!


「因みにお嬢様をモデルにしたお相手は、恵比寿様ですけどね」

 と付け加えるように言って、私は背筋がゾワリとした!


「うげえええ!!な、なんで私の相手が創作とは言え、柚乃なのよ!!


 ちょっと!魚住!これは由々しき問題だわ!高清水に一言、言ってやるわ!」

 と言い、私は高清水に会う事にした。





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