第4話 夢姫、決意する。(4)

 王様はちらりと自身の机の上へと目線を流しました。そこには、昼間の執務で呼んだ手紙の束が積み重なっています。「ふむ」と納得するかのような声を出すと、その束へと手を伸ばします。お后様はその様子をただ眺めていました。


「隣国の姫を城へと招待するのはどうだろうか」


 王様はそう言いながら、ある一通の手紙をお后様へと手渡しました。お后様が「読んでも?」と尋ねると、王様が深く頷きました。


 お后様がその手紙へと目を通すと、そこには隣国の王様からのふみが綴られていました。


「面倒姫を遊学させたいから、受け入れてほしいと……?」


 王様はまた、深く頷きました。


「面倒姫もまた、隣国の君主の手を焼かせているようだ。それならば、二人を引き合わせてみるのはどうかと思ってな。后はどう思う?」


 王様に意見を求められたお后様は、言葉を窮しました。隣国の面倒姫と言えば、面倒事ばかり起こす姫様として有名です。そんな姫様を王城へ受け入れたとして、誰が面倒を見ることができるのだろうかとお后様は思いました。


「友人の居ない夢姫に、同じ年ごろの女子おなごを引き合わせるのも、また私たちの役目やもしれぬぞ?隣国の姫となれば、この国の女子とは違って、損得は何もない」


 お后様ははっと目を見開きました。夢姫には、友人が一人も居ません。夢姫がこの国の姫である以上、相手は夢姫を友人と思える女子は居ないからです。夢姫に近づいてくる女子は、弟たちの婚約者になりたがる者ばかりです。


「夢姫を籠の中の鳥にしてしまったのは、他でもなく私たちだ。それならば、籠の中にもう一羽の鳥を入れてあげるくらいしても良いのではないだろうか」


 お后様は深く頷きました。


「姫の友人を奪った責任を取らねばなりませんね」

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