第31話 隠れた真実

 永山はウイルスに感染していないことが確認されると会議室のような部屋に移された。その会議室の変わっている点は中央が強化ガラスで仕切られていることだった。そして、永山のいる方は椅子が1脚、ガラスの向こう側には10脚の椅子が置かれていた。椅子は半分が使われていた。3人の自衛隊員、白衣を着た1人の女性、そして外国人が1人だった。

「君たちは民間人を不当に拘束している。自衛隊にそんな権限があるのか」

「非常事態宣言が発せられた。拘束には法的根拠がある」

「一緒にいた若者はどこにいるんだ。怪我をしているはずだ」ガラスの向こう側にいる女性が永山の質問にうろたえたように見えた。彼女は怪我をした民間人がいることを知らないのに違いなかった。

「治療をしている。命に別状はない」「銃撃されたんだ。ここは病院じゃないだろう」「ここには医療施設があるし、腕のいい医官もいる。心配ない」

「君はここで起きていることをどこまで知っているんだ」強面の外国人が流暢な日本語で質問を始めた。

「質問に答える前に君たちが誰なのか自己紹介をしてくれ」会話が聞こえないよマイクのスイッチが切られると自衛隊員はしばらく相談した後に言った。

「いいだろう。私は山科一等陸佐、隣が笠原上席研究員、そして、宮島一等陸佐と立川一等海尉だ。質問したのは米軍のウインター少佐だ」

「全員、軍人というわけか。自分が知っているのは恐ろしいウイルスが爆発的に広がっているということだ。そして、この房総沖の海底にウイルスに関係する物体が沈んでいるということだ」ガラスの向こう側の全員がその答えに衝撃を受けて顔を見合わせた。その反応は永山にとっても意外だった。

「なぜ潜水艦が沈んだことを知っているんだ」山科の言葉に今度は永山が衝撃を受けた。沖合に上がる煙は見たが、まさか潜水艦が沈んでいるとは思ってもみなかった。事態は永山の想像をはるかに超えて進んでいた。

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