第2話 緊急通信

「艇内で疫病が発生した模様です。至急、救急隊員の派遣を要請します」横浜の第三管区海上保安本部に巡視艇まつなみから緊迫した通信が入った。

「まつなみ、どんな症状なんだ。何名が発病した」「恐ろしい状況です。何名が発病したのかは分かりません。原因不明の疫病です。奴らが襲って来る。あー」通信が突然途絶えた。それからは本部から通信に応えることは無かった。

 第三官区海上保安本部ではこの事態を受けて、対策会議が緊急開催された。会議では汚染された巡視艇と曳航されていた漁船に近くの船舶が近づかないように周囲に巡視船を配置することと巡視艇と漁船を調査するために陸上自衛隊対特殊武器衛生隊の派遣を要請することが決定された。その頃、首相官邸には極秘で招集された重要閣僚が集まり始めていた。

 宮島一等陸佐が隊長として、第101対特殊武器治療隊を率いて第一護衛隊所属の護衛艦いずもに到着したのは午後11時を過ぎていた。巡視艇と漁船は海上保安庁の巡視船のサーチライトの明かりに照らされて、暗闇の中に怪しく浮かんでいた。護衛艦いずもは当初はヘリコプター搭載護衛艦だったが、F35ライトニングII戦闘機が離着艦できる空母に改装されていた。

「宮島一等陸佐、巡視艇の保安官に何が起きているか分からない。十分気を付けてくれ」いずも艦長の大城一等海佐はこの任務に不安を感じ始めていた。

「大丈夫です。どんな事態になっても隊員は対応できる準備をしてきています」防護服に身を固めた宮島隊長は敬礼をするとMCH-101ヘリコプターに乗り込んだ。

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