第11話 おもてなし②


「フゥ。満腹」


 流石に出された料理を全部食べ切れることはなかった。

 当然だ。ザッと十人前くらいはある。一人でどうにかなる量ではない。

 いつの間にか、人の気配が消えたと思ってソファーを覗き込むと金髪美少女は寝息を立てていた。


「も、もしもーし」


 呼びかけても反応がない。

 指で頬をツンツンすると目を覚ました。


「あ、すみません。楽にしすぎました。お食事はもうお済みですか?」


「うん。清々しくて逆に好感度持てたよ」


「あははは。ありがとうございます」


「それより君は何なんだ?」


「あ、申し遅れました。私は早乙女留美奈さおとめるみな。整体師のものです」


「整体師? て、ことはマッサージ?」


「はい。今日はコウスケ様の専属のマッサージをさせて頂きますのでどうぞよろしくお願いします」


 満面の笑みで早乙女さんは言った。

 マッサージか。別に凝っているわけじゃないけど、一流ホテルではこのようなサービスがあるんだと納得した。


「それでは脱いでもらえますか?」


「え? 脱ぐ?」


「あ、こちらの甚平に着替えて下さい」


「あぁ、そう言うことね。了解」


 着替えようと服を脱ごうとしたその時だ。


「あの、見られていると恥ずかしいんだけど」


「すみません。後ろを向いていますね」


 そそくさと早乙女さんは後ろを向く。天然なのだろうか。


「着替えました」


「ではそこの台にうつ伏せで寝て下さい」


 部屋の奥にサッマージ用の台があり、俺はそこにうつ伏せになった。


「では始めていきますね。どこか凝っているところはありますか?」


「いえ、特にありませんので適当にやって下さい」


「分かりました。では失礼しますね」


 背中に触れられる感触が伝わった。


「力加減はどうですか?」


「はい。大丈夫です。むしろもう少し強くてもいいくらいですね」


「そうですか。では力を加えて行きますね」


 グググッと一気に力が加わった。その力はだんだん強くなり、耐えられるものではなかった。


「イタタタ! ギブ。痛いです」


「え? 何ですか?」


 更に力が加わる。


「早乙女さん。もうやめて。ストップ!」


 俺の身体から手が離れた。


「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


「はい。あなた、本当に整体師なんですよね?」


「はい。勿論です」


 その割には気持ちよくない。むしろ不快であった。


「次は仰向けになってもらえますか?」


「はい」


 俺は体制を変えて仰向けになる。


「もう少し手足を広げてもらっていいですか?」


「こうですか?」


「はい。そんな感じです」


 カシャン。


「カシャン?」


 音のした方向を見ると両手足は錠で拘束されていた。


「あの、これは?」


「動かれると困るので」


「何をするつもりですか?」


「何ってマッサージですけど」


「マッサージってここまでするんですか?」


「はい。勿論です」


 俺の一般常識がないとしても絶対にこれはおかしい。

 そう、何かがおかしいのだ。


「では初めていきますね」


 早乙女さんは裾を肌蹴て俺の乳首周りを指でなぞった。


「ちょっと。これ、本当にマッサージなんですか?」


「勿論です。大人しくして下さいね。すぐに気持ちよくしますから。フゥ」


 早乙女さんは俺の耳に息を吹きかけた。

 一気に俺の力は抜けてしまう。


「コウスケさん。良い身体していますね。私、凄く好みなんです」


「そ、それはどうも」


「じゃ、マッサージを続けていきますね」


 身動きが取れない状況の中、早乙女さんは俺に迫る。

 何をされるか分からない状況に俺は困惑した。


「あの、もうマッサージはいいですから」


「そう遠慮しないで下さい。私、凄く上手って言われるんですから」


 ダメだ。俺はもう戻れないところまで行ってしまうかもしれない。


■■■■■

★★★を下さい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る