5 王子さま笑われる

するとカイルは何やら諦めた様子で、淡々と述べる。



「分かりました。いや、もう訳が分からないけど、とりあえずオレが姫さまの目の前で着て見せますから。その後、オレが出て行ったら、姫さま1人で着替えてください。」


言い終わるやいなや、カイルが目の前で着替えだした。


シャツの隙間からチラリと、引き締まった身体と腹筋が見える。


あら、カイルって意外に着痩せするタイプなのね。



一方、、、



「なぜ、こんなことに、、」


まさか自分がアーシャの前で着替えさせられるとは夢にも考えていなかったカイルは、自分をそばでじっと見つめる視線に対し心の中で嘆く。




姫さまの涙目に、つい放っておけなくて言ってしまった•••



すごく真剣に頼んでいたけど、よく考えると•••いや、考えるまでも無く•••なんか昔から努力の方向性がズレてるんだよな••••真面目に考えて出した結論なんだろうけど••••••



◇◇◇




そんなカイルの心の内を知るはずもなく、その後カイルをドアの外にだしたアーシャが悪戦苦闘すること小1時間。



多分、大丈夫。

騎士に•••見える?


鏡に映る姿は、どこからどう見ても男性に見える、、よね?


全体的に華奢なアーシャの身体は、胸周りもスッキリしている。


女性としては大変残念だけど、、、


男装には都合がいい!

はずだ。


「カイル、待たせてしまってごめんなさい。入っていいわよ。」



カイルは入るなり•••••



「ハァー」


額に手を当て、頭が自然と下に垂れてしまうのを自覚しながら、覚悟した。目の前に立つ騎士の姿をしたアーシャが、どれほど変装しても人目を惹いてしまうのを•••


青のマントに覆われ、スラリと伸びた手足、透明感のある肌に意志の強いまなざしが宿る。

中性的な美貌に変身したアーシャは、より一層不思議な色香を放っていた。




男女問わず興味をひくだろうが、、、


だが、、


もしこんな姿を街の女性たちが見たら、、


そこまで想像したカイルは、、、




「プッ、、、あんた、それ、騎士というより、、どこぞの王子さまじゃないか。似合いすぎ、、、フフッ」




え?何?

何か変かしら?

今朝からカイルの態度が可笑しくない?

こちらはいたってまじめなんですけど??



私の考えてることがお見通しなのか、今度は真面目な顔をして、


「姫さま、今のままだと、街に出た時、必要以上に注目されますよ。前髪で顔を思い切り隠しましょう。」


私と目線を合わせ、顔を覗き込むようにして言う。


その瞬間カイルのこげ茶色のサラサラとした髪が、私の目の前で揺れた。


子ども時代は私の方が背が高かったのに、いつの間にこんなに大きくなってたのかしら? などと関係ないことを考える。



そもそもこんなに美形なのに、カイルが攻略対象者でないのは不思議だ。

ゲームの記憶も曖昧だし全ルートを攻略したわけでないからはっきりとは言えないけれど、褐色肌のキャラなんていたっけ?


そもそもカイルや周りは、隔世遺伝だと話してるけど、私が知る限りカイルの家族の誰も、そしてカイルの亡くなったお祖父様やそのお父様も聞く限りは皆白い肌だった。


それなのに隔世遺伝?

カイルの存在自体が少し謎なのよね•••

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