第12話 軍資金すくな!

 そしてマイルとシズの魔物素材を買い取りを見ていた。このカウンターで素材はそのまま買い取られているらしく、男のギルド職員二人がマイルと俺の二人分の風呂敷の中身を金属のトレーに入れてカウンターの奥に運んでいった。


 そしてシズが持つトレーには金色の硬貨が結構ドッサリ乗っていた。

「ほいっ依頼の成功報酬と素材の買い取り、全部で百五十万ペスカね」


 百五十万ペスカ、これは報酬としては悪くないのか?仮に日本円で百五十万だとする。

 しかし百五十万であんな大きくてヤバイクマの相手をしろと言われても絶対に無理だ。


 まあこんな世界じゃ人間の命なんて軽いって相場が決まってんだよな。

「あっそれとオッサン、もしも冒険者ギルドに登録するなら手続き済ませちゃう? どうせするならその方が楽なんだけどな~~」


 冒険者ギルドに登録か……確かにそれも考えてはいたが、この女子のプラスに働く事は一切したくない気分の心狭し男子なんだよな俺。


「う~~ん、けど確かにどうせする事になるだろうし……登録するか」

「それなら登録料がいるわ、報酬を渡しとくわよ」


 マイルが渡された報酬の金貨から俺に数枚をくれた。マジか、あの化け物から逃げ回ってあの化け物を解体も出来るだけ手伝ったのに……。


 しかし俺なら助けてやった上に街まで連れて来てもやったヤツに報酬まで分けるかと聞かれると…。

 そう考えるとこの数枚の金貨でもむしろありがたいと思えるから不思議だ。


 ……………本音? せめて三分の一は寄こせよこのクソ女が! って思ってますが何か?


「それじゃあ私はもう行くよ」

「ちょっ流石にこれは少なくないか!?」

 やっぱり建前で自分を騙すのは良くない事だ、俺は本音を言った。


「……………」

「おいっ! マイ…」

 マイルは走るより早い早歩きで冒険者ギルドから出て行った。


「まっマジかアイツ!?」

「うっひひ~まあ貰えただけマシじゃない? 普通に碌でもない冒険者ならオッサンを見捨てて報酬独り占めにしてるわよきっと」


「………それ冒険者は碌なヤツがいないって言ってるだけだから! ギルドなんだからゴロツキには首輪くらいつけといてもらえるかな!?」


 俺言葉に特にガラの悪い冒険者がガン飛ばして来た。言われたくないならその風貌をなんとかしてからにしろよな!


 もちろん心の中だけで罵倒する、現実にはヘラヘラしながら頭を下げたよ。


 やっぱり建前って大切だかんな。

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