File7 桜庭昭彦とグレイトキング幹部2人

 俺は九鬼泰照。裏社会で暗躍する暴露屋だ。

 さぁ、今宵も依頼者がやってくる。

 今回の依頼者は、車椅子の男だった。名は志賀大介しがだいすけと言った。

 「依頼内容を」

 「えぇ。人の足を壊すよう命令しておいて、何の罰も下らなかった男を堕としてください」

 そう言う志賀の目には、怒りが籠もっていた。




 志賀は、有名サッカーチーム、『光本みつもとトワイヤル』のキャプテンで、MFの選手だった。

 司令塔でもあり、仲間達に程よい指示を出し、また、得点王でもあった。

 しかし、有名人にはアンチが付きもの。そんな彼にも、アンチが一人いた。

 その名は桜庭昭彦さくらばあきひこ。サッカー評論家で、評論家界では知らないものはいないという程の、有名評論家だった。

 そんな桜庭は、志賀を毛嫌いしていた。それは何故か。若くして得点王、キャプテン、司令塔という3つの特徴を嫌がっていたのだ。

 本人曰く、『そういう奴は心の中で笑っている』という、まさしく、野菜嫌いの子供以上に質が悪かった。

 そして、その憎しみはどんどんと増幅し、超えてはいけないラインを超えてしまった。

 5ヶ月前の深夜。志賀が買い物に行こうとコンビニに行っている最中、後ろから、暴走している車が走ってきたのだ。

 志賀は避けようと、横に避けた。しかし、ギリギリ間に合わず、車は両足に当たった。

 その瞬間、足の感覚は無くなり、志賀は救急車を呼び、病院に着くときには、もう意識を無くしていた。

 そして、起きたときに医者に言われたのは、『もう二度と足は使えない』。

 そう、足が修復不可になるぐらいに残酷な状態になっていたため、手術は不可能だったのだ。

 この瞬間、志賀の目の前は白くなった。

 それから志賀は地獄だった。

 サッカー選手人生は絶たれ、大変な車椅子生活。しかし、自分を轢いた犯人は一向に現れない。

 それから2ヶ月後、桜庭の友人と名乗る男が来たのだ。

 その男は衝撃の真実を語った。

 「自分は、桜庭に命令されてあの運転をしました」

 そう、志賀の足が壊れたのは、桜庭の計画によってだったのだ。

 桜庭は、志賀が二度と活躍できないように、借金まみれの友人を使い、最低でも足を壊させようとしたのだ。

 志賀は怒った。桜庭は、自分の手を使わず、人の人生を壊したのだから。

 そして、ここに来たのだ。

 「お願いします。桜庭を社会的に抹殺してください!」

 「わかりました。では、奴を堕としましょう」

 俺はまず、桜庭を徹底的に調べ上げた。

 桜庭昭彦。34歳。日本で有名なサッカー評論家。

 彼は、とある半グレ組織から贔屓にされている。その半グレ組織というのは、『グレイトキング』であるのだ。特に幹部の高御堂壮次たかみどうそうじから推されていて、彼の推すサッカー選手を推さなければ、殺されると考えるほどである。

 俺はまず、桜庭を教唆でマスコミに売った。

 次に、俺は会長に許可を貰い、高御堂が指揮を執る支部に行った。

 扉を開けると、構成員がこちらに突撃してくるが、俺は峰打ちをして、リーダーの部屋に向かった。

 そのドアを開けると、高御堂と見覚えがある顔がいた。

 「お、お前は…」

 「く、九鬼!」

 「まさか、木ノ原も一緒にいるなんてな」

 「チッ!とりあえず…」

 「遅い」

 俺は奴の持つピストルを奪い、眉間に撃った。

 「へっ。噂には聞いていたが、こんな強いなんてな」

 すると、高御堂は後ろのバックから一本の小さなナイフを取り出した。

 「アンタのせいで、俺の推していた桜庭が今、豚箱の中だ。なので、それを死で償うといい」

 その瞬間、それをダーツのように投げた。

 「おっと」

 ナイフは壁に刺さった。そう、高御堂は投げナイフが得意で、裏社会では『投げナイフの高御堂』と呼ばれている。

 すると、間髪入れずにナイフを投げた。しかも二本だ。

 まず、一本を顔を動かして避けたが二本目は肩を狙っていた。

 そして、ナイフは肩をかすめた。その瞬間、熱い痛みが肩を襲う。

 「くっ…」

 俺は痛みを堪え、壁に刺さっていたナイフを持ち、突撃した。

 「ほう。突撃するとは」

 高御堂はまたナイフを投げ、俺の持っていたナイフを飛ばした。

 「なっ…」

 「このナイフは、近距離でも有利だ」

 高御堂はナイフを俺の腹に刺した。しかし、俺は痛くなかった。

 「これは……」

 「防刃チョッキだ」

 俺はナイフを奪うと、高御堂の腹に刺した。

 「ぐぶっ」

 その途端、高御堂は倒れた。

 「強い野郎だ」

 すると、急に高御堂はぼやいた。

 「お前は………グレイトキング幹部を二人殺した………いずれ……その報いを受けるだろう………」

 そう言って、高御堂は何も言わなかった。

 俺は藤松会の構成員に死体処理の電話を掛け、その場を去った。




 その後、志賀は義足を付け、義足を付けたサッカーチームに入ったという

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