怒号

カラカラと北風に巻かれ、枯れ葉が足元にすがりつく。絶え間なくそそぐ波潮が細かな泡となり、かすかに音をたてながら消えてゆく。

山々をおおう雲の底辺が朱色に染まり始めると、けあらしにかすむ赤灯台のが、いつの間にやら落ちていた。


空を見上げる。

彼方に游ぐオオシロワシの体がぐらついた、先ほどよりも波頭が白い。

乾いた風が潮のしぶきを遠くに飛ばし、俺の横面よこつらを少しだけ濡らした。



どうする、俺……

自身に声を掛けながら桟橋に視線を落とす。

弾ける波潮のかたわらで、テトラポットにへばりついた消えずに残る薄汚れた泡の塊が、なんだかすこぶる哀れに思えた。



おい、どうするよ!



海のうねりが波打ち際に砕け散ると、怒号は無惨に泡となった。




・・・


参考音源

オジー・オズボーン

「ミスター・クロウリー」

ランディ・ローズ ギターソロより(カバー)

https://youtu.be/yg7gZCZ_ODk

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