決して来ない時

初めて見る絵ではない。そうだ、絵画展で見たことがある。確かフランスの画家だ、バルテュスと言ったかしら。


バルテュスの絵には少女が描かれた作品が多い。なぜ少女を描き続けるのかについて、

「それがまだ手つかずで純粋なものだから」

と答えたのが印象深く、記憶に残る。

絵画の下には作品の題名が記されている、

「決して来ない時」と書かれていた。


「決して来ない時」

椅子に浅く腰掛けて片足を投げ出し、上半身を反り返らせるような、不自然なポーズで眠っている少女。その奥にいるもうひとりの少女は、大きな窓から遠くをただ見つめている。

窓からうっすらと差し込む陽は、その絶妙な色彩により、観る角度で朝陽にも夕陽にも想起させる。それは観る者のその時の感情により、左右されるのでしょう。


わたしには、夕陽に見えた。



椅子に腰掛け微睡む少女。

窓の外を見つめているのは、その少女自身ではなかろうか――


「今」この瞬間、過ぎ去って行く時間は決して後戻りすることは出来ない。

逢魔が時、夢の中の少女には、窓の外に何が見えたのか、決して来ない時を愁いでいるのか。


絵画を観ているうちに、なんだか視界がぼやけてきた。


わたしは、泣いている?





どういう訳だかこのまま、


この絵をずっと観ていたくなった。




・・・


参考資料

バルテュス作『決して来ない時』

https://kakuyomu.jp/users/2951/news/16816700427808123183


参考音源

「帰らざる日々」

久石譲

https://youtu.be/muYphg7xqtI



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