第28話 禁書

「よし、だれもいないぞ」

「大丈夫かしら」

「平気だよ。アデルは誰か来ないか見張っていて」

「うん、わかった。カノン」


放課後、カノンとベンジャミンとアデルは図書館にいた。

「禁書コーナーは……こっちだな」

 ベンジャミンが先を歩く。

「くそ! 棚にカギが閉まってる」

 舌打ちするベンジャミンにカノンが言った。

「僕、開けられるか試してみる」


 カノンは目を閉じて、棚の鍵に触れ、目を閉じた。

「鍵が開くのをイメージして……」

 カシャ、と小さな音がした。

「……やった、扉が開くよ!」

 カノンは禁書の入った戸棚の扉を開いた。


「うわ、いろんな本がある……」

 ベンジャミンが目についた本を開き、首を振って元に戻した。

「調律魔法の本はどれかな? ……ん? これは……」

 カノンが取り出したのは『ライラ・クロークの記録』という本だった。

 開いてみると、そこには『調律魔法士、ライラ・クロークの罪について』と書かれている。


「見つけたよ、ベンジャミン! アデル!」

 カノンは本を床の上に置いて読み始めた。

「ライラ・クロークは我がマジア王国を危機に陥れた……」

「カノン! だれか来るわ」

 アデルが廊下からカノンたちのほうにかけてくる。

「本は……とりあえず戻そう! 本棚の鍵をしめろ、カノン!」

「……うん」

 カノンはベンジャミンの言葉に従い、本を戸棚に戻し鍵をかけた。


「君たち! そこは立ち入り禁止だよ!」

「アラン先生!」

「何をしていたんだい?」

「いいえ、別に。僕たちもう行かないと……」

 ベンジャミンがそう言って図書館の扉のほうに歩き出した。カノンとアデルもそのあとを追いかけていく。


「本当に、調律士が国を危機に陥れたんだね……」

「カノン、まだきちんと本を読んだわけじゃない。結論を出すのは早いんじゃないか?」

「そうよ、カノン」

「……そうだね、ベンジャミン、アデル」

 カノンたちはそれぞれの部屋に帰っていった。

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