第25話 食堂

 食堂のテーブルに着くと、カノンたち三人はため息をついた。

「あーあ、これからしばらくトイレ掃除か……」

 ベンジャミンは頬杖をついて、カノンを横目で見た。

「仕方ないね」

 カノンは両手を組んで、顎を乗せたままベンジャミンを見つめ返した。

「みんな、ごめんね……」

 アデルは手を膝に乗せたまま、うつむいている。


「おやおや、みんなどうしたのかい? カノン、昨日はずいぶんご活躍だったみたいじゃないか?」

 にやにやとしながら、ミランが話しかけてきた。茶色の髪が朝日に照らされ、オレンジ色の目がきらりと輝いた。

「なんだい? ミラン、なにか用?」

「森に探検に行ったんだって? 僕たちはまだ学生だっていうことをわかってないんだね」

 ミランはさげすむような眼で、カノン、ベンジャミン、アデルをじろじろと眺めた。


「あっちに言ってちょうだい、ミラン」

 アデルがしかめ面でいうと、ミランは口元だけで笑って言った。

「アデル、ずいぶん偉くなったんだな。お前のせいで罰掃除をすることになったやつがいるのに」

「それは……」

 アデルは唇をかみ、涙を浮かべて黙り込んだ。


「ミラン、いいかげんにしてよ!」

 カノンが立ち上がると、ミランは一歩下がってから言った。

「カノン、ちょっと調律魔法が使えるからって調子に乗るなよ? 調律魔法士は血の気が多いらしいからな……国を裏切ったやつもいるし」

「え?」

 カノンが聞きなすと、ミランは右手をひらひらと動かしながら首を振った。

「お前、知らないのか? まあ、わざわざ教える義理もないしな……」

 ミランはそれだけ言うと、カノンたちを嘲笑するような表情をのこし、立ち去った。


「国を裏切った調律魔法士……ベンジャミン、アデル、何か知ってる?」

「うーん……」

「……私、すこしだけ……お母さんから聞いたことあるかも……」

 アデルはうつむいたまま、小さな声で言った。

 

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