第23話 学校へ

「アデルのお母さんも家に帰っていったし、俺たちも寮に帰ろう」

 ベンジャミンがカノンとアデルに言った。

「そうだね、朝になる前に戻ろう」

 カノンは寮に向かって歩き出した。

「ありがとう、二人とも」

 アデルは歩きながら二人に礼を言った。


 暗くなった森のわきの道をたどり、寮の裏口についた。

「さあ、変身魔法だ」

 三人はネズミに変身すると、寮の裏口の小さな亀裂から中に入った。

 人がいないことを確認して、人の姿に戻った三人は、それぞれの部屋に戻っていった。


「ああ、疲れたなカノン」

「ちょっとね。だけど、アデルのお母さんが助かって良かったね、ベンジャミン」

 カノンとベンジャミンは二人の部屋で、それぞれのベッドにもぐりこんだ。


 その時、ドアがノックされた。

「カノン、ベンジャミン、いますか? 扉を開けなさい」

「……はい」

 カノンが緊張して扉をそっと開けると、ドアの外にはアラン先生が腕を組んで渋い顔をして立っていた。


「カノン、ベンジャミン、寮を抜け出して何をしていたんですか?」

「えっと、あの……」

 カノンとベンジャミンは顔を見合わせて口ごもった。

「今日は遅いので細かい話はしませんが、明日の朝、食事の前に職員室に来なさい。アデルにも同じ話をしてあります。ちゃんと来るんですよ。さあ、もう寝なさい」

 アラン先生はそう言うと、カノンたちの部屋から離れていった。

「あーあ。バレてたのか」

 ベンジャミンがため息をついた。

「うん、まいったね」

 カノンはパジャマに着替え、ベッドに入った。


「おやすみ、ベンジャミン」

「おやすみ、カノン」

 ベンジャミンもパジャマに着替え、自分のベッドにするりともぐりこんだ。

 外からは、なんの音も聞こえてこない。

「……静かだね……ベンジャミン?」

 カノンが耳を澄ますと、ベンジャミンの寝息が聞こえてきた。


「今日は疲れたよね……。僕ももう寝よう」

 カノンはベッドの中で目をつむった。

 すぐに眠気が襲ってきた。


 寝息だけが聞こえる部屋から見える月は、ただ静かに輝いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る