第9話

「みなさん、そろいましたか? それでは基礎魔法の授業を始めます」

 アラン先生が校庭にならんだ生徒たちに言った。

 カノンたちはまだ上がっている息を整えながら、アラン先生の説明を聞いた。

「まず、火の魔法のページを開いて最初に書いてあるファイアーボールの項目を……ミランさん、読んでください」


「はい」

 ミランは茶色の髪をかき上げてから、教科書を読んだ。

「ファイアーボールは火の魔法の基礎です。炎の球をイメージして魔力を放つと、小さな火球が飛び出します。火球の大きさは魔力の大きさに比例します」

「はい、よろしい」

 アラン先生は満足そうに頷いた。


「ファイアーボールなんて、習わなくてもできるよな?」

 ベンジャミンがカノンに言った。

 カノンはあいまいな笑みを浮かべて、何も言わなかった。


「それでは、ファイアーボールの練習をしましょう。みなさん、横一列にならんでくだい」

 生徒たちはアラン先生の言葉に従って、一列に並んだ。

「手を前に出して……炎をイメージして……ファイアーボール!」

 アラン先生が言うと、みんなも手を前に伸ばして「ファイアーボール」と叫んだ。

 いっせいに、小さな火球が一列になって飛び出した。


「カノンさん、真面目にやってください!」

 アラン先生は、ファイアーボールの魔法が使えなかったカノンを見とがめた。

「先生、まじめにやっています!」

「じゃあ、もう一度」

「……ファイアーボール!」

 カノンは叫んだが伸ばした両手の先には、なにも現れなかった。


「おいおい、まじかよ?」

 クラスの誰かの声が聞こえた。くすくす笑いも聞こえてくる。

 カノンは顔を赤くして、もう一度呪文を唱えた。

「ファイアーボール!!」

 しかし、カノンの手からは何も出てこない。


 アラン先生はため息をついた。

「もういいですよ、カノンさん。あなたには火の魔法の適性がないようですね」

 カノンはアラン先生の言葉を聞いて、がっかりした。


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