第3話

 会場の奥から来たのは魔法学園の学園長だった。

「私は魔法学園の学園長、クリス・テイルだ。君はカノン・ハリス君だね」

 カノンは父親よりも年上のクリスが、ぐっと顔を近づけたので驚いて一歩下がった。

「おっと、失礼しました。君のような魔力をもつ子は初めて見たので興奮してしまったよ」

クリスは笑顔でカノンに手を差し出した。

「クリス学園長……僕は何か、悪いことをしてしまったのですか?」


「いいや、君の才能が図れなかっただけのことだよ」

 カノンはおっかなびっくり、差し出された手を握った。

「君の魔法学校への入学を許すか否かは、会議をしなくてはいけないな」

「……? 僕はどうすればいいんですか?」

 カノンの金色の目に、むつかしい表情をしたクリスの姿が映っていた。

「……とりあえず、今日のところは帰っていい。会議の結果が出たら君の家に連絡をしよう」

 クリスは口元だけで笑うと、カノンから手を離した。


 カノンは会場から出て、父親の姿を探した。

「お父さん!」

「カノン、どうだった? なんだか会場がさわがしかったようだけれど、大丈夫か?」

「うん」

 カノンはうなづいた。

「それで、結果はどうだった?」

 カノンの父親は緊張した面持ちで、カノンに尋ねた。


「……保留、だって」

「は?」

 カノン答えを聞いて、父親は不思議そうな顔でカノンにもう一度尋ねた。

「保留?」

「うん」

 父親は一人、腕組みをして目をつむってから言った。

「保留なんてあるんだな」

「僕も、わけがわからないよ」

 

 会場を整理している兵士がカノンたちに声をかけた。

「測定が終わった方はおかえりください」


 カノンと父親は、とりあえず家に帰ることにした。


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