ちょっとおかしな顧問編②

 *この話では、登場人物に政治的に偏っている考えの人がいます。気分を害される方は読むのをおやめください。



 そして、なんとか朝までに原稿が完成したのである。


 僕はウキウキな気分で顧問の山上先生に印刷した原稿を持っていった。


コンコンコン...(社会科研究室の扉を叩く音)


ガチャッ!


 『失礼します!山上先生はいらっしゃいますか?』


 向こうのほうから呑気な、は〜いという声が聞こえる。社会科研究室に入室する。そこは、地理の古宮先生が紅茶の缶を大量に積んでいたり、世界史の静香先生が銃を置いていたりする、所謂、物置部屋のような部屋であるが、またこの話をするとしよう。


 本棚の横の狭いスペースを潜ると、そこには男子校には珍しい女性の明川先生もいて、古宮先生も静香先生もそこにいた。


 『山上先生!部誌が出来上がりました!見てください!』


 この後、衝撃的な言葉を聞かされると思ってもみない、僕が嬉しそうに言い放った。


 山上先生は、ひょっとこみたいな顔で僕から部誌を受け取る。その瞬間、ひょっとこみたいな顔は、引き攣ったように見え、そしてそこには怒りが滲み出ているような様子が窺える。


僕は、普段の授業から考えられない山上先生の顔に恐怖を覚えたのである。なぜ、怒っているのか?自分に自問自答する間もなく、山上先生は僕にこう怒った。


 『ぉ、お前は!天皇制を讃美しているのかぁ!!!!』


瓢箪から駒である。全く分からない。僕は先生に問う。


 『どういうことですか?』


先生は、矢継ぎ早に、唾を飛ばしながら言い放った。


 『元号を使っているからだぁ!!!』


最初はなんの冗談をと半信半疑だったが、本気で言っているのである。


僕が半信半疑だというのも、代々、部誌の形式は一緒なのである。去年も今年も、先輩がくれた部誌の形式を採用しているのであるが、部誌の表面に『平成◯年◯月◯日』と表記するのは、過去の先輩も一緒なのである。過去の先輩時も、なんの問題もなく校閲してきた山上先生が怒ることに、僕が混乱したのは言うまでもない。


 そこで、怠惰の象徴とも言える地理の古宮先生が慌てて会話に入ってきて、僕に言ってきた。


 『西園寺君。うちの学校の行事予定表を見てもらえれば分かるけど、西暦のあとに元号を書いてるでしょ!!そういうことだよ!!』


 と、実際に行事予定表を見せてきながら、僕に言う。そこで、初めて周りを見渡したのだが、山上先生と同じ歳くらいの古宮先生も、20代中盤の静香先生も明川先生も山上先生のことを見て、ドン引きして、口をあんぐりあけている。


 山上先生はヒートアップしてるせいか気づくこともなく、僕を社研から返したのである。


 後日、山上先生にこの事を聞くと、ひょっとこみたいな顔で


 『そんなことは言っていない!』


 とほざく。僕が予想するに、古宮先生が元公民教師である東校長先生にこのことを報告して、東先生を含む偉い先生方から、先生の政治思想の偏りが及ぼす教育上の懸念点を指摘され、怒られたのだろうが、これは建前であろうことには変わりがない。というのも、山上先生を筆頭に東先生を含め、この学校の教師は左に偏っているのだから。


この左に偏った教師陣が、自分たちのことになると保守的になるという話は今度話そう。



真・タイトル『反天皇制の顧問』


【追記】ここまで読んでくださり、ありがとうございました!好評なら、個性あふれる生徒や先生との日常を綴りたいと思います!応援や・コメントお願いします!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る