金色の鳩

西しまこ

1.待ち合わせ

 やばい! 遅くなっちゃった!

 あたしは小走りで駅へと向かう。

 今日は小学校のときの友だちと初詣に行く。

 どの服にしようか悩んでいたら、遅くなっちゃったよ~。

 昨日の夜に決めていたはずの服装を着て鏡を見たら、なんだか子どもっぽく思えて、結局上から下まで全部替えた。

 悩みに悩んで決めた、ベージュのロングのプリーツスカートが足にまとわりつく。昨日の夜決めていたのは、ミニスカートにニーハイソックスだった。それは大好きな服だったけど、今日はちょっと違う雰囲気で行きたくなったのだ。

「お待たせ!」

 息を弾ませて待ち合わせの駅に着くと、もうみんな来ていた――と思ったら、大樹だいきがまだだった。

美月みつき、あけおめ!」

 琴子ことこが手を振りながら元気よく言う。

「あけおめ、琴子! 遅くなって、ごめん」

「大丈夫、遅刻じゃないよー。まだ二分前だよ。そもそも大樹、まだ来てないし」

「そうそう、大丈夫。あけましておめでとう、美月」

 と、さとし

「あけおめ、聡」

「あけおめ、美月」

 今度はせい。……星は今日も全身まっ黒だ。鞄も、あたたかそうなネックウォーマーまで黒い。

「あけおめ、星」

 あたし、いつもは明るい色の服を着ていたのだけど、今日のセーターは黒、ショートブーツも黒。きっと星が黒い恰好で来ると思ったから。

「あけおめー‼ 遅くなってごめん!」

 大樹が走って来た。

「一分遅刻!」

 琴子が楽しそうに言う。

「ああ、くそ! 自転車がパンクしてなきゃなあ!」

「自転車、パンクしてたんだ」

「うん、最近乗ってなかったからさ」

「そうなの?」

「うん、小学校のときはあんなに乗ってたのにさ」

「あたしは塾に行くときに乗るなあ」「僕も」

 と琴子と聡。

 琴子と聡は公立中学へ、あたしと大樹とそして星は私立受験をして私立中学へ進んだ。私立中学は中高一貫校だから高校受験がないので、中一から塾に通っている子はほとんどいない。対して公立中学に進んだ子たちはだいたい塾に通っている。したがって、琴子と聡はまだまだ自転車生活が続いているけれど、あたしと大樹と星は自転車に乗らなくなってしまったわけだ。

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