#7 音楽(3)

 詩人たちはいつの時代も「音楽には自然の無生物をも支配する力がある」と信じてきたが、それを否定する人はいないだろう。

 シェイクスピアは、音楽の惹きつける力で流れ星を説明した。


「荒れた海は、彼女の歌で落ち着きを取り戻した

 星々は、海の乙女(人魚)の音楽を聞くために

 狂ったように飛び出した」


 散文家もまた、音楽から霊感を受けて最高の雄弁さを発揮してきた。

 プラトンは「音楽は道徳的な法則だ」と語っている。


「音楽は、宇宙にソウルを、精神マインドに翼を、想像力イマジネーションに飛翔を、悲しみに魅力を、すべてのものに華やかさと生命を与える。音楽は秩序の本質であり、善、正義、美のすべてへと導く。目に見えないにもかかわらず、まばゆいほどに情熱的で、永遠の型である」


 ルターは、「音楽は、神からの公平で輝かしいギフトだ。私はこの世界のために、音楽へのささやかな貢献を放棄することはないだろう」と語っている。


 ジャック・アレヴィは、「音楽は、神が私たちに与えてくれた芸術だ。すべての国の祈りの声を、調和のとれたリズムでひとつにすることができる」と語っている。


 カーライルは、「音楽とは、無言の、底知れぬ言葉のようなものだ。私たちを無限の果てへ導き、その中を瞬間的に見つめさせることができる」と語っている。


 また、近代科学の最も深遠な論者の一人であるヘルムホルツ(Helmholtz)の言葉も引用しておこう。


「うねりのある海の中と同じように、この動きはリズミカルに繰り返され、しかも絶えず変化しながら、私たちの注意を引きつけ、急き立てる。しかし、海では目に見えない物理的な力だけが働いているため、観客の心に最終的に印象を残すのは孤独だけだ。それに対し、音楽作品ではアーティスト自身の感情の流れに沿った動きとなる。優しく滑るように、優雅に跳躍するように、激しくかき回され、貫かれ、または情熱の自然な表現と苦闘しながら、音の流れは原始的な生気の中で、聞く者の魂に『アーティストが自分自身から耳にした想像もつかない情緒』を吹き込む。最後に、神が選んだわずかな者たちを、永遠の美という安息に引き上げてくれるが、ほとんどの者は先駆者となることを許されない」


 ニューマンは「音階は七音しかない。十四音つくろう」と言い、次のように語っている。


「それにしても、これほど大掛かりな仕事なのになんとスレンダーな装備だ! これほど少ないものからこれほど多くを生み出す科学が他にあるだろうか。これほど貧弱な要素から、偉大なマスターは新しい世界を創造するのだ! この豊かな発明はすべて、単なる創意工夫と芸術のトリックであり、一時的に流行しているいくつかのゲームのように現実味も意味もないと言えるだろうか……。豊かでありながら単純で、複雑でありながら規則正しく、多種多様でありながら荘厳な、あの尽きない音の進化と配置は、すぐに消えてなくなる『単なる音』で作られているということがあり得るだろうか。神秘的な心の揺らぎや鋭い感情、どこから来るのかわからない不思議な憧れや不快なイメージは実体がなく、行ったり来たり、それ自体で始まって終わる『音』によって、私たちの心に引き起こされるのか。いや、そんなことはありえない! 音がもたらすものは、どこか高次の領域から抜け出してきたのだ。永遠のハーモニーが、音を媒介にしてほとばしり出てくる。私たちの根源からの響き、天使の声、聖人のマニフィカト、神性が支配する生きた法則、あるいは神の属性というものだ」



(※)マニフィカト(Magnificat):キリスト教聖歌のひとつ。新約聖書『ルカによる福音書』第一章46〜55節の「聖母マリアの祈り」のことで、ラテン語版冒頭が「崇める」という意味のマニフィカト(Magnificat)から始まる。



「それは、私たち以外の『何か』であり、私たちは理解することができず、口にすることもできない。だが、死すべき人間は(特に抜きん出たところがない人間も)それを引き出す才能を持っている」



 詩と曲は、歌の中で結ばれて一つになる。

 歌は、昔から労働の甘い伴侶だった。

 船頭の無骨な歌声が水面に浮かび、羊飼いは丘の上で歌い、牧場では乳搾り女が、畑では農民が歌う。すべての商売、すべての職業、すべての行為と人生の場面で、昔からその人だけの特別な歌があった。花嫁は結婚に向かい、労働者は仕事に向かい、老人は最後の長い休息に向かうために、それぞれにふさわしい不朽の音楽があった。


 音楽は、まさに「共感の母」「宗教のしもべ」と形容されるものだ。

 皇帝カール六世がファリネッリに語ったように、単に耳を魅了するだけでなく、心に触れることを目指さなければ、音楽が持つ効果を十分に発揮することはできない。


 十九世紀現在、私たちの生活は、風変わりで、退屈で、金に卑しいと考える人が多い。それが事実かどうかは大いに疑問だが、もしそうなら、音楽のニーズはなおさら切実なものとなる。


 音楽がこれまでに人間にしてくれたことと同じように、これからも多くのことを期待できるかもしれない。


 さらに言えば、音楽はすべての人の喜びである。

 科学や芸術を理解するにはある程度の学びが必要だが、教養ある耳はさらに音楽の美しさを理解するようになるのは間違いない。音楽を愛していない個人や民族も存在するが、幸せなことにそのような人は稀だ。


 良い音楽は、必ずしも多額の出費を必要としない。

 それは今も金持ちの単なる贅沢ではない。時代が進むにつれて、貧しい人たちの慰めや安らぎになることを願っている。




【原作の脚注】


[1] Morris.

[2] Plato.

[3] Crowest.

[4] Rowbotham, History of Music.

[5] Wakefield.

[6] Shakespeare.

[7] Swinburne.

[8] Shakespeare.

[9] Cowper.

[10] Rogers.

[11] Shelley.

[12] Dryden.

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