流行りのAIマッチングアプリを試したら、義妹にめちゃくちゃ似ている女の子とマッチングして付き合うことになった結果、義妹にばれて修羅場になった

渡月鏡花

第1話 はじまり

 色とりどりのネオンサインが街を飾っている。

 あたりはすでに夕焼けから夜空へとかわっていく時間帯だ。


 だから少し肌寒い。

 白い吐息をついて、わずかに凍えた両手へと吹きかける。


 時計台の針は、18時の前。

 集合時間まであと5分ほどある。


 早めに着き過ぎてしまった。


 でも初めて会う人なんだし、5分前行動は普通だろう。


 だから決してマッチングアプリで初めてマッチした相手と会うことに浮き足立ってしまったわけではないのだ。


 単に一般常識の範疇で、早め早めの行動をとっているにすぎない。


 ……まあ、でも少しくらいは浮き足立っているかもしれない。


 パチパチ公園前はたむろする俺くらいの年齢の奴らでごった返している。

 そんな群衆をぼーっと見ながら、浮き足立つ気持ちを鎮めて時間を潰そうとした。


 その時だった。


「あの——」

「——っ!?」

「レンくんですよね?」

「はい。俺がレンです。あなたが——」


 振り返ると、見知った人物がいた。

 いや、人物というか……義妹だ。


 灰色の大きな瞳はうるうるとしている。

 

 少し恥ずかしいのか頬は僅かに朱色に染まっている。


 ミディアムボブの金色の髪がふわふわと舞って、僅かに甘い香りが鼻腔をくすぐった。

 

 久々に見る義妹——シズクは普段と異なりしっかりと化粧をしていた。それに黒髪から金髪に染めたのか、かなり雰囲気が明るい。

 でも確かに義妹だ。


 さすがに2年ほど会っていなかったとはいえこの整った小顔を見間違えるはずがなかった。

 何度も芸能事務所に誘われるくらいに可愛い女の子だ。


 それに声だって非常に似ている。

 少し透き通る甘い声。


 小さな桜色の唇が僅かに動いた。


「あの私がレイです。マッチングアプリでマッチした……レイなんですけど」

「えっと、シズクだよな?何やっているの?」

「……?私、レイですよ?あれ、レンくんですよね?」


 キョトンと首を僅かに傾げて、シズク……いやレイちゃんは俺を見た。

 

 あれ、この反応……本当に不思議そうにしている。


 初めて会った人にする態度だよな?

 

 あれあれ……これは他人の空似というやつなのか?


 だとしたらやばくないか。 

 初対面で知り合いの異性と間違えるなんて——一発でアウトじゃないか!?

 

「……ああ、ごめんなさい!本当に知り合いに似ているから……ごめんなさい」

「ふふふ、よかったー。声かける相手を間違えちゃったのかと思いました」

「いや、本当に似ているからびっくりした」

「ふふ、世界には自分に似た人が3人いるらしいですよ?だから、その人と私はきっとすっごく似ているんですね」


 そう言ってレイちゃんは儚げに微笑んだ。


 この時が、俺とレイちゃんの出会いだった。

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