器の中

 店の中、どんぶりの中。

 確かめたときに、わくわくするのか幻滅するのかは具体的に確かめないとわからない。ある程度の予測はたつが、正確だという保証はない。

 自分の心でさえ、時として確かめるのは危険を伴う。越し方行く末の複雑な気持ちにかかわるならなおさらだ。

 そんなとき、この食堂は少しだけ手助けしてくれる。まあ、暖かい物でも食べて一休みしろと店全体から語りかけられるような。

 日本中から人が集まる東京に、そうした店が生まれるのは必然であるが、行き着けた主人公は幸運であった。

 必読本作。

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