第5話 初任務① 任務の目的

異世界でフルーツ娘を密猟者から守る組織『フルクト・リダルナ』に所属した私は一通り説明を聞いて、さっそく初任務に行くことになった。司令官である美咲さんがゲートを開き、出発の準備は整った。


「そういえばですけど、美咲さんと咲弥ちゃんって、日本人じゃないんですか?」

「ええ、私も日本人よ。でも、こっちの管理がいそがしくて日本に帰れてないのよ。咲弥に関しては、両親は日本人だけどこっちの世界の生まれだから日本には行ったことがないわね」

「そうなんですね。でも、何で美咲さんは魔法が使えるんですか?基本、生き物には魔力回路か何かがないと魔法は使えないはずじゃ…」

「あら、詳しいのね。でも、そういうのは訊かないのがお約束よ。あ、そうそう、今カミングアウトしちゃうけど、あなたたち日本担当よ」

「…え?」


こうして私たちは日本に飛ばされてしまった。


「ここは…?」

<「そこは日本、徳島県の剣山つるぎざんよ。その山のどこかに黄色い髪をした『柚子ゆず』のフルーツガールズがいるはずよ。密猟者よりも先に彼女らを見つけて保護してちょうだい」>

「分かりました」


こうして、私たちは柚子のフルーツガールズを探すことになった。


「何で私たちは日本担当なんだろう?」

「…私たちはまだ初心者です。向こうの、私たちの世界では強い魔法を使う密猟者もいるから私たちのレベルでは到底対抗できない。だから初心者はよほど魔法が使われなくて言葉が通じる地域に飛ばされることが殆どなの」

「あぁ、そういうことね咲弥ちゃん」

「ちゃんは付けないで欲しいです。私もあなたを麗華と呼ぶのであなたは私を咲弥とだけ呼んでください」

「あ、うん」

「ところで、あなたは何でフルクト・リダルナに入ったんですか?」

「え?何でって…、マリィさんに誘われたから、だけど?」

「言うと思いました。しかし、そこにあなたの意志はありますか?あるなら今ここで語ってください」

「えぇ…」


何で急にこんなことに?別に何でもいいと思うんだけどな…。まぁいいや。それなりに思い当たることを話しておこう。


「私は数日前、6人のフルーツガールズに助けを求められて…」

「それは知ってます」

「そっ!?それで、彼女たちと過ごした日々は今までと違ってとても楽しくて、いつの間にか自分がまもらなきゃ、って思うようになってたの。昨日の【黒】の襲撃も私が攻撃から守ってあげれたことがなんとなく自分の誇りに感じれたというか…」

「そうですか。その程度ですか」

「…え?」

「これは決して遊びではありません。せいぜい足を引っ張らないようにしてください。」

「…何でパートナー相手にそんな態度を…」

「麗華、私は入団3か月だということは言いましたね?」

「うん、言ったけど…」

「私、この団ではないけどもっと前からやってたの」

「それで…。ちなみに、どこでやってたの?」

「麗華に言っても分からないと思うかもしれないけど、『FJVVフィブ』、ってところよ」

「それって、『トリカゴ』の?」

「何故麗華がそれを…?まさか、マリィが言ったのですか。まったく…」

「じゃあ、何で咲弥はこの道に?」

「…私が密猟者を裁く道に進んだ理由、それは7年前。司令官から聞いたと思うけど、私はあの世界での出身、育ち。だから友達には当然フルーツガールズもいました。けどある日、私の親友、いえ、真友達マブダチだったの家が密猟者に襲撃されて、FJVVの到着が遅かった。生憎あいにくその密猟者は誘拐し損ねた上に捕まった。でも、あの娘は帰ってこなかった。殺されていたからです。だから、私はその時決心したんです。誰かが傷つく前に密猟者を捕らえ、二度と私のような境遇に立たされる者をなくす、と。だから、誰一人麗華のように生半可な判断と単純思考で任務に臨んでほしくはないです」

「私だって生半可じゃないよ!もしも彼女たちに出会わなかったら平凡でつまらない人生だったかもしれないから…」

「私もそうだったかもしれないです。FJVV最年少の11歳でFJVVに入団して、それなりの地位まで行ったのに…。5か月前、密猟者を被害者の目前で惨殺して、ショックで気絶した被害者の意識が1か月経っても戻らなかったことから脱退させられた。だから私はフルクト・リダルナの任務で汚名返上を果たしてFJVVに戻りたいんです。実は、マリィさんもFJVV出身だったけど何らかで脱退させられて、その時養ってくださってた美咲さんとFJVVに一泡吹かせようってことでフルクト・リダルナを結成したらしいです。そのおかげで今、私は真友達やかつての被害者たちの為に活動できています。だからこそ、それに感謝して精一杯奉仕してほしいです」

「なるほど。確かに私も1人で密猟者に立ち向かうのはこの先しんどかったかもしれないし、感謝しなきゃいけないのかもね」

「それじゃあ、さっそく柚子のフルーツガールズを探しましょう」


そして私たちはバックパックの中にあった便利アイテム『果実娘探査機フールティルフルクト』を使って反応の強い方へ向かっていった。

すると、そこにさらし・・・(胸に巻いた布のこと。詳細はpixivで)をした金髪ポニーテールで緑色のベレー帽をした少女がいた。


「もしかして、君は柚子のフルーツガールズかな?」

「え!?何でフルーツガールズのこと知っとるの!?まさか密猟者なの!?」

「密猟者なんかじゃないよ。私たちは君を保護しに…」

「そうやって騙そうとしとるんだろ!?うちゃ騙されんでよ」

「ほ、方言…?」

「何いよるか分からん?」

「いや、分かるけど…」

「分かるってことは、あんたは日本人か?」

「そうだよ。それで、君も密猟者に追われてるの?」

「いや、聞いたことがあるだけじょ。うちゃここの生まれやけん」

「つまり、向こうの世界のことは知らないわけか」


「ねぇ、さっきからこのは何を言ってるの?」

「この娘が話してるのは方言っていう言葉で、地方によって多少話す言葉が違うんだよ」

「そういうことがあるんですね…。」


「ところで、君の名前は?」

「うち?うちの名前は特には無いでよ」

「え?どういうこと?」


「シナノスイートとかみたいに、品種名、っていうのが種族名と別でつくんですよ。きっと彼女は品種名が無いって言いたいんだと思います。」

「なら、柚子の有名な品種…?そうだ、君の名前は多田錦タダニシキだ!」


「多田…錦?」


続く

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