第6話 ラピス、翌日の学校にて。
翌日、私はいつも通りの日常をいつもと違った気持ちで迎えました。
「ラ〜ピスちゃんッ!」
「わっ、茉実ちゃん!おはよう、元気いいね」
「おはよー。そりゃ初VRゲームで色々なスキルを使えて楽しかったし、テンション上がって寝れなかったよー。だがら深夜のノリだと思って今日は許して?」
「あはは⋯⋯、ちゃんと寝ないと体に悪いからね?しょーがないから授業は私がメモしておくし、当てられたら教えるから眠かったら寝てていいよ?」
「ありがとう!今夜も遊びたいからお言葉に甘え」
「甘えるなっと。まったく、担任として居眠り宣言は見過ごせるわけないだろ」
「あはは⋯⋯」
茉実ちゃんの頭を後ろから来て手帳で軽く叩いて注意してきたのは担任の森永先生でした。体罰やプライバシーに厳しいこの時代でも恐れずに生徒と向き合ってくれる先生はクラスみんなから愛されているので茉実ちゃんも笑って誤魔化しました。
「貴方もですよ。森永先生、体罰は問題になるからスキンシップのつもりでもそういうのはやめなさいとあれほど」
「げ、 北里先生っ!」
「げ、ではありません。そんな学生のような反応をするから生徒たちが弛むのですよ」
「ぁ」
その森永先生の更に後ろからやってきた学年主任の北里先生が森永先生を注意しますが、声が大きくて私は目立っていることに居心地の悪くなり茉実ちゃんの制服を無意識に掴んでしまいました。
「私は気にしないので森永先生を叱らないで下さい。それに先生は授業に遅れないように私を心配してくれただけって分かってますから」
「⋯⋯はぁ。わかりました」
そんな気持ちを察してか茉実ちゃんは騒ぎを収めるように動いてくれます。ほんと、周りをよく見てる子だよね、と第三者的視点から見てもいい子すぎると思います。
「ありがとう、茉実ちゃん」
「ううん、私が悪いんだしラピスちゃんは気にしないので」
そんなこんなで教室へ向かおうとすると森永先生が振り返って爆弾発言をしてきました。
「あ、それとラズベリー。ゲームに夢中になるのは構わないがネットとリアルはきちんと分けろよ。特に本名とか使ってるヤツは変なヤツに絡まれやすいからな」
いや、待って。なんで私が"ラピス"って名前で遊んでるの知ってるの?昨日会ったプレイヤーで思い当たるのってセピアさんくらいしか⋯⋯、ってマジかー、うわ。マジかー。
「森永先生もゲーム好きだもんね。生徒が犯罪に巻き込まれないように先生もVRゲームで遊んでたりー、したら面白いよねー」
茉実ちゃんの話を聞き流しながら私は歩いた。マジかー。
「人ってあまりに衝撃を受けると語彙量がなくなるよね」
「なんの話?」
「なんでもないー」
休み時間になり、さっそく寝てた茉実ちゃんが申し訳なさそうにノートを写させてと頼み込んできました。
「もう。言われたばかりで寝るなんて、しかも森永先生の授業でって流石に私も尊敬するよ」
「違うよー、寝ようと思って寝たわけじゃないの。えっと⋯⋯寝落ち?」
「寝落ちなら仕方がないね」
「ないわけあるかっ!」
またまた森永先生登場、昨日までより距離感近いし絶対にセピアさんだ、コレ。
「あまりに気持ち良さそうに寝てたから起こさなかったが、テストの点数で未来の選択肢が変わるんだ。後でわからないことがあれば教えてやるから聞きに来い」
そう言って去っていきましたが、本当に面倒見がいい人ですね。というか、先生がネットとリアルを分けれていないじゃないかというツッコミは"男だから問題ない"と返された未来の話はまた今度。
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