第17話 メリサスの街

俺たちは4人の冒険者に先導してもらい東へ、メリサスという街へ向かった。


普通に徒歩だともう少し早く到着するらしいが、台車とカートを引いての草原移動なので時間がかかった。

街に到着した時はかなり陽も暮れていて街の門は閉まっていた。

が、門兵にギルドまで走ってもらい、ギルドの計らいで俺たちは無事に街へ入る事ができた。


ライアンはまだこの世界の人間を警戒していたが、俺は平和な日本で育ったせいか完全に信じていた。

というか信じるしかなかったっていうか。

それにジョリーが吠えないから良い人達かもと、犬能力に全信頼を置いていた。


そりゃあ”異世界転移もの”の小説ではその国に騙されていいように使われたりコロされたりとかってのもあるけどさ、

読んでる時は『騙されるなよ』『もっと疑えよ』とかも思ったよ?

でも結局その当事者になったらどうにもならなくて、信じるしかないじゃん。

だって物語のように『チート能力』とか『魔法』なんて使えないし、森でひとりで生きてなんていけないもん。



「ジョリー、信じてるからな?」

「クウン?」


ライアンが苦笑いしながら俺とジョリーを見ていた。


その夜はギルドの部屋に泊めてもらえた。



翌朝、ギルドの一室で朝食を摂り、それからギルド長やら誰やら怖そうな人や偉そうな人達から色々聞き取りをされた。

ジャパンフォレストの事、アメリカンフォレスト、フランスフォレストの事を話した。


王都への移動の打診を受けたが、俺たちはまだ行ってない北側の森や自分達の森をしばらく回りたいと話した。

そのためギルドでこの世界の勉強と冒険者の登録をする事になった。



この世界の人の言語が通じるのは不思議だったが、それ以前に英語もフランス語も通じるという謎現象を思い出した。


「うっかりゆうきにタイ語で話しても普通に通じるからゆうきってバイリンガルかと思った」


というのはクラの言葉。

俺はずっと日本語しか話していない。

もちろんギルドでもそうだ。


ギルドではギルドのお姉さんがこの世界の事を説明してくれた。

国の事、通貨の事、宗教の事、魔物の事、冒険者の事。

話を聞けば聞くほど、ファンタジー小説とマッチしてるのが謎だ。

どうやってかこの世界の情報が電波とかになって小説家の脳に入って来てるんじゃないかって思う。

だってスライムとかゴブリンとか、マジでいるそうだ。



説明の後はギルドの近くの貸家に案内してくれた。

しばらくの間、俺たちに貸してくれるんだって。

そこにカートや台車の荷物を置いて、今度は街の中を案内してくれた。

宿屋、食堂、市場、鍛冶屋、武器屋、防具屋、小物屋、教会など。

パンや野菜などの食材は市場で手に入るそうだ。

なんかホント、これゲームで言うところのチュートリアルみたいだ。



翌日はまたギルドに行って今後は冒険者登録だ。

これが驚いたのなんのって!

登録の際に本人の資質を測る謎の機械があるのだけど、何と!俺たち魔法の資質があったのだ。


落ち人は魔法の資質が高い事が多いらしい。

とは言えそうそう落ち人が落ちてくるわけではないので、伝承で伝わってるだけだったそうだが。

今回5人も落ちて来て驚いたそうだ。


ちなみに魔法は『火』『水』『土』『風』『雷』の5種だ。

まぁ1番低いレベルだそうなので今後の訓練次第で伸びるもの伸びないものと分かれて行くそうだ。

ふふふ、俺は頑張って5種伸ばして『万能型』になろうと思う。

別に勇者になりたいわけじゃないからどれかに特化しなくてよいのだ。




ギルドの魔法訓練施設での俺たちのはしゃぎようと言ったら、ねぇ?



「火よ、偉大な炎になりその姿を表せ!」

「ミシェル、いつのまに呪文を勉強したの?」

「ふっ。今作った!」


「ライジングサンダアアア」


いつも冷静なライアンが右手を上げて叫んでる!


「土魔法って何をどうするの?」

「ファイアボール!ウォーターボール!エアボール!サンダーボール!アースボール!」


パチェラ…全部ボール系だ、攻撃は丸系に統一するのかな。

よっし!俺も頑張るぜ!

左手と左目に包帯を巻いて…包帯ない…タオルでいいか、黒いのがいいな、とバッグを漁る。


「皆さん!落ち着いて!説明しますからちょっと落ち着いてください」


魔法訓練施設のおじさんがかなり大変そうだった。

とりあえずその日は全員、5種の魔法の発動に成功した。

ちょっとショボかったけど、まぁ出ただけでもすごいよね?

だって魔法だよ?

地球には無かったからね。

あとは各自の練習次第だって。


俺たち5人は無事に冒険者になったのだった。

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