第26話 『アルデス山』に入ってみた

「確かに物々しい雰囲気だな」


 数時間『ビー』を狩ったあと、マリンはそろそろログアウトするということで、俺はマリンと分かれアルデス山へとマップを進めた。アルデス山は少しだけ木々が生えているが、基本的に岩肌が剥き出しの山だった。山頂はどんよりとした昏い紫色の雲で覆われていて見ることは出来ない。


 マップを見ると今入ってきたところとは反対方向にマップの切り替えポイントがあるようだ。現在は『アルデス山麓』とある。恐らくここから数回マップを切り替えて先に進むのだろう。実際に切り替えポイントに向けて登っていくようになっており、山頂に向かう道なのがわかる。


 また、マップにはまだ戦ったことの無いモンスターのアイコンをいくつか見つけることが出来た。岩っぽいモンスターや、イノシシのようなモンスターと様々だ。だけど今回はシナリオを進めるのが目的なので、道中で出てくる雑魚モンスターとは戦うことはしない。俺の火力じゃ時間がかかって仕方ないだろうと思ったからだ。


 と、モンスターは素通りしたけど近くを通っても反応してこないところを見るとまだ序盤だし、ほぼ全てのモンスターがこちらからダメージを与えないとターゲットしてこないタイプなのだろう。メインクエストをクリアすると所々で経験値が手に入る。序盤は特にその比率が高く、無理にレベル上げに専念してモンスターを狩らなくても良いという易しい作りになっていたのが『Lunatic brave online』だったから、多分その流れを踏襲しているのだろう。かと言って俺みたいに序盤からがっしりとやり込むタイプのゲーマーにも楽しめるゲームバランスだったからシリーズ四作目と息の長いタイトルになれたのだろうが……


 次のマップは先程のマップにあった木々の姿は全く見えなくただの岩肌のマップだった。大きな岩も転がっており、『アルデス山麓』よりも生気の無いマップとなっている。山頂に広がっていた昏い紫色の雲も少し広がっているようで、視界も先程までより若干悪い。

 視界が悪い中でも先に進まなければならないと、俺はマップを確認すると『アルデス山中腹』とある。マップでなら次に進む方向もわかる。モンスターの姿もアイコンで確認出来るが、先程までと同じモンスターのようだ。


「ここは視界も悪いしすぐに通過してもいいマップだな……」


 と、すぐに俺は次のマップに向かったが、入ろうとすると急に何か画面がポップしてきた。


『この先はパーティーを組んだ状態では入れません。解散して先に進みますか?』


 俺は今パーティーを組んで無いから問題無いが、パーティーで入れないマップとなるとボスフィールドでボスと戦う訳じゃないっぽいな。かといって普通のマップでも無さそうだ。イベントが起こる、もしくはイベント専用マップなのだろう。


「ふむ。何かあるにかもしれない。とりあえず『リバイブⅠ』をありったけ作っとくか……」


 何かの予感というか、違和感というか、なんとも言えない感覚が俺を過った。かつてのゲームの勘とも言うべきか。準備を怠ってはいけない、そんな感じがした。だから俺は金策用にと取っておいた『はちみつ』を使ってありったけ『リバイブⅠ』を作り出した。


「これでよし、と……さて、行きますか」


 俺は画面にでてきた『はい』の言葉をタップし、次のマップへと足を踏み入れた。

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