第6話 ステータスについて聞いてみた

「助かったよ……アンバーって言ったっけ? 俺はアオイだ」


 モヒカン野郎が遠くに行くのを見送った俺は、目の前に割って入ってくれた少女に挨拶をした。少し見下ろすくらいの背の高さ、オレンジがかった瞳の色と同じ色のツインテールの髪を持った可愛らしい少女だ。

 モヒカン野郎を追い払ってくれた威圧感のある声とは裏腹な姿に俺は少し驚いた。が、見た目なんてあくまでゲームの中のアバター。実際は筋骨隆々のおっさんなのかもしれない。


「そうよ。アオイでいい? 私もアンバーでいいから。でも、少し会話が聞こえたけど、『Lunatic brave online IV』は初めてみたいね。ごめんなさいね。あんなのに初っ端から絡ませちゃって」


 右手を頭の後ろに回して、てへへと可愛らしくアンバーは謝った。今度は見た目と一緒で可愛らしいアニメのような声だった。仕草も可愛い。もう、中身のことは考えないようにしよう。ムサイおっさんがこんな可愛い仕草をしていたら、と思うと少し悲しくなる。いや、中身も可愛い少女なんだと夢を持った方がゲームを楽しめるってもんだ。

 というか、何故この状況でアンバーが謝るんだ? 助けてくれただけでアンバーは悪いことなど一つもしていないのに……

 そう思った俺は肩をすくめてアンバーにこう声をかける。


「ごめんなさいってアンバーは悪くないだろ? 何もしてなかったんだし」


「でも、私の好きなゲームで嫌な思いしたでしょう?」


「まあ、びっくりしたし、イラっときたけどあれくらい大丈夫だよ。第一、このゲームにはなんも悪い印象なんか抱くわけがない、悪いのはあのモヒカン野郎個人の話だからな」


 俺は笑顔でそう答えた。

 実際、理不尽な上司も居たもんな……亀の甲より年の功とでも言うのか? それとも慣れたのかな? ただ、さすがにゲームについて馬鹿にされると頭にくるのは変わってないけど……


「そう、なら良いけど……もし良かったらお詫びにこの『Lunatic brave online IV』の世界を教えてあげるわ」


「そうか。ありがとう。俺の知ってるゲームと違って少し戸惑ってたんだ」


 俺は頷きながらそういうと、アンバーも笑顔で頷き返した。


「じゃあ、ちょっとあの雑貨屋の裏に行きましょ。ここじゃさっきの件もあるし注目浴びちゃうから」


 と、アンバーは歩き出してしまった。辺りを見渡すと確かに俺たちの方を見ている人も多い。俺は急いでアンバーを追いかけた。


 アンバーはすぐ近くの建物の裏に回ると、そこに置いてあった木箱に腰掛けてから、隣をポンポンと叩いた。座れってことか?

 そう解釈した俺はアンバーの隣に腰掛けた。


「さて、何から聞きたい?」


「そうだな……とりあえずステータスについて知りたい」


 と、俺が口にするとアンバーが驚いた表情で俺に聞き返してきた。


「って初めに説明あったでしょ?」


 そういえば最初にステータスについて聞くか尋ねられたな……


「いや、だいたい知ってるからいいかなーって飛ばしました……あはは……ごめんなさい」


 俺はそう言って頭をぺこりと下げた。アンバーのため息が聞こえる。


「まあいいわ。とりあえず見ながら説明しましょ」


 といい、アンバーは指をパチンと鳴らした。


「ああ、私はメニュー画面を開く動作をこれ・・に設定してるのよ。とりあえずアオイは『メニューオープン』っていえばいいわ」


 マジか……恥ずいな……俺もあれで開けるように後で設定方法を聞こう。でも、とりあえずメニューを開かないとな。


「メニューオープン!」


 お、さっきみたいな半透明な画面が浮かび上がってきた。俺はさっきの要領でステータス画面を開いた。


「開けたみたいね。とりあえずざっとステータスを説明するわね。まず重要なのはSTRね。これは物理攻撃のダメージアップと装備重量に関わってくるわ」


「装備重量?」


 俺は聞きなれない言葉に聞き返してしまった。装備重量なんて『Lunatic brave online』じゃなかったしな。


「ええ、そうよ。武器や防具にはそれぞれ重量が設定されているのよ。例外もあるけど、強い武器ほど重いと思っていいわ」


 なるほど。カード系のゲームでデッキコストとかあるけど、それみたいなものかな。強いカードはコストが重くて沢山は入れられない。似たようなものかな。


「Lv上がれば装備重量の上限も増すけど、あとはSTRもそれ・・に関係してる。だから早く強くなるにはSTRをあげるのが主流ね。物理でのDPSを求める猛者はSTR極が当たり前になってるわ。次にINT。これは魔法系のダメージとMPに関係してくるわ」


「それはわかる。でも、装備重量も関係してくるんだろ? INTばかり上げる訳にいかないよなぁ」


「お、いい質問ね。飲み込み早いわね。でも、杖とか魔導具は装備重量が低く設定されている物が多いからSTRに振りすぎなくてもいいのよ。もしくはLvで補うか……」


「つまりINTで強くなるにはバランスよくステータスを上げて、良い武器も装備出来るようにするか、装備重量はLvで補うかか……INT極でも攻略出来るってことか」


「ええ、そうよ。VITも受けるダメージ減るし、HPも増えるから壁役をやりたい人はVIT極だし、AGI極で回避壁なんかをやる人もいる。でも壁役なんかソロ攻略大変だしあまりやりたがる人いないかな。だからこそパーティー組む必要があるくらいのボス戦だと貴重な存在ね。壁は」


 俺は何度も頷いた。STR極、INT極、VIT極、AGI極と『Lunatic brave online』の時もそれぞれ楽しんでいる人は居たし、理由は納得出来る物だったから。

 あれ……でも……DEXについてはまだだな。

 と、俺はアンバーの説明から抜けているステータスである、DEXについて尋ねた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る