名も無き辺境惑星上での海戦(前編)。
ダイブ空間の中を移動中のドラゴ―ニャたち。
「おっ、地球人のソナーが見えるぞ」
重低音のバリトンボイスだ。
遠くの方に流線型のソナー装置が見えた。
ダイブ空間にソナー装置だけ潜らせているのだ。
「こんな辺境に戦艦がいるのね」
「いいわ、ステルスで乗り切りましょ」
「ん~、そうだな」
紅い宇宙船の壁の一部が開いて、キラキラとした粒子が周りに散布される。
「ステルスコロイド、散布完了したわ」
これで、電磁的にも視覚的にも隠れることが出来た。
「進みましょ」
「しかしなぜ、地球型惑星なんだい?」
「”ドラゴンショック”を調べたいのよ」
「ああ、確かに気になるね」
”ドラゴンショック”とは、何故か地球型の環境の中ではドラゴンの力が大幅に落ちることを言う。
「本来の力の十分の一くらいと言われているわねえ」
ドラゴンたちが地球圏に進出しない理由である。
「研究の初期で開戦したもんなあ、地球側と」
「で、自分が地球型の惑星に直接下りて調べるということだね、ラーニャ」
「そうよ、お兄様」
まあ、弱くなっても人類に比べてドラゴンは十分に強いのだ。
「目的の星に近づいたよ」
地球の軍艦のソナーは見えない。
どっかに行ったようだ。
「通常空間に出る?」
「ええ」
「ダイブアウト」
銀色の波を蹴立ててドラゴンと紅い宇宙船が通常空間に出てきた。
青い星が見える。
ピンピン
ピピピピピ
ピイイイイイイ
「なっ」
魚雷の追尾音?
ドオオオン
至近で爆発。
「魚雷攻撃だっ」
「どこからっ」
ダイブアウトした無防備な瞬間。
死角から魚雷を撃たれた。
「とりあえず逃げてっ」
ドラゴンと紅い宇宙船が高速移動。
「あれかっ」
少し離れた所に自分と同じくらいの大きさの軍艦がいた。
雷撃駆逐艦、”
◆
「ほっほっほっ」
「そんなぬるいステルスじゃあ、我々は抜けんて」
初老の雷撃手だ。
「じゃが、すごい加速じゃ」
「六枚翼のドラゴンなんて初めて見たぞい」
「ただのワイバーン級ではなさそうじゃのお」
初老の乗組員たちが口々に言う。
「どうする艦長、初撃をかわされたから、もう勝ち目はないぞ」
こちらはクラッシックを通り超えてアンティーク艦だ。
圧倒的な性能差である。
「う~ん、ドラグーンシップの動きが気になるなあ」
「普通、瞬殺されてるよね~副長?」
「まあ否定はできないな」
「ふ~む、一番二番、通常魚雷装填」
「ドラゴンを惑星の方に行かせることは出来る?」
「ははっ、”ドラゴンショック”かの」
初老の操舵士だ。
「若いのによく知ってるの~」
「じゃあ、そういう方針で」
「わかったぞい」
ドラゴンを惑星に落とすつもりだ。
◆
「また古い船だなあ」
低いバリトンボイス。
「ええ」
ドラゴ―ニャがモニターに映る艦を見る。
雷撃駆逐艦、”豆狸(まめたぬき)”
データにあった。
「退役間近ね」
「だが、よく整備されてる」
使い込まれた道具のすごみ、だな。
「で、どう思う?」
話が出来るかしら。
「ははっ、一ひねりだけど、手ごわいぞ」
あのタイミングで魚雷攻撃。
相手の装備が古くなければどうなっていたことやら。
「そう、でも捕まえましょう」
「ふふ、かなり難しいと思うがやってみよう」
相手は古強者だな。
ガコン
ガコン
「む、魚雷の装填音」
敵の艦首魚雷発射口がひらいたのを見た。
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