3、マル

「マルにしたよ」


 彼女に言うと、不思議そうに見つめられた。


「急にどうしたんですか?」


「君の名前。マルにしたよ」


「マルですか。わかりました」


 無感情に受け入れられてしまった。僕はちょっと不安になる。


「どう思う? 自分の名前」


「人代名詞による相対的な識別に加え、固有名詞による個体識別が可能になりましたね」


「まあ、そうだね……」


 彼女は僕の目を覗き込む。


「微かに悲しみの感情を検出しました。大丈夫ですか?」


「悲しくなんかないよ」


「元気出して下さい。バイタルは正常ですよ」


 そう言ってマルはニコリと笑った。

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