気分屋の神様

ショウマ

0 プロローグ

第1話 ははっ。そりゃないぜ

欲しいものなんて、人それぞれだ。愛なんて形は人それぞれだ。

この世の中は曖昧さを美しいとする文化がどこかにある気がする。

曖昧さを具現化していった時、その見え方が単純になってしまうの嫌で、みんなが逃げてしまうからだ。



それを知りたいと奥深くまで掘り下げて見た時、見えるのはいつも限界値だけで、限界突破なんてありがたいゲーム性もない。限界が常に付きまとう世界ならば、一体なにを求めて、何の気持ちでここまで突き動かされて来たのだろう。

よって、愛など、欲しいものなどは、ただの幻想であり、偽物だ。





街の風景を見ながらそんな益体もないことを考えていた。新年度が始まり、一ヶ月もたったこの日。


段々新しさにも慣れ始めて俺はいつもどおりを満喫していた。

新しさといえど、俺の周りには人はおらず何ならほとんどなにも変わってはいない。

なんだよ。青春って登下校に人がいるのが普通じゃねえのか。なんで誰もいねえんだよ。

何そんなに俺、特殊?いや特別かもしれない。だけども、無理に新しさに適応しようとすると、痛い目にあう事は知っている。なぜなら、新学期始まっての自己紹介で、ネタに走り、失敗に終わり、今クラスで一人の地位を確立している人を俺は同じクラスとして間近に見たからだ。

かあちゃんいったでしょ。身の丈に合わないことをするから失敗するんだって。大丈夫。あんたにはかあちゃんがついてる。そんなお涙頂戴のありがたい裏話があることも俺はもちろん知っている。


でもまあ、怪しいくらいにほんとにいつも通りである。








今日もいつも通り教室に入り、窓側の席に座る。


頬杖をしながら、窓の外のキラキラな青い景色を見る。ときたまに来る、隙間風が頬に触れ体全体に覆う。そんななんでもない空虚な時間がとても俺は好きだった。










で、

好きだったのになんでお前は邪魔するんだ。この野郎。

イライラしそうなこの感情を抑え、目の前の厭味ったらしい野郎に目を移す。


彼は陽辺智樹というらしい。学年トップの成績を持ち、顔もイケてるため男女ともに人気な妬ましい人間だ。新年度始まってからすぐ、俺は目をつけられてしまった。

ボッチが過疎化する現代にお前は異質なんだよ、そうお前は非凡な才を持ってると声をかけられ、なんか嬉しい気持ちになり、つい干渉してしまった。

ホストに貢いで抜け出せなくなる女性とまるで一緒の気持ち。


ってか俺褒められてるのかな?




 「おはよう。柊薫。」

 

「おはよう。でもお前。良いんだぞ。無理に声、掛けなくて。」


「ある意味、実験みたいな感じだからな。楽しいぞ。」

ああそう。ならいいわ。


 「それにしても、今日のお前なんかキモいぞ。ラノベ主人公みたいで。」


 「うるせー。またいつもの冗談だろ。ちょっと傷つくからや、、」

 

「いや冗談抜きで」

やはり、俺は友達選びというのを間違ってしまっていた。


 「新学期当日までちょっとタイムスリップしてくるわ」 


 「残念だな。俺とお前は生まれた頃から赤い糸で結ばれている。」


 「智樹エンドはヤダ」


 「何言ってるんだ」

 ノリわりいなアアああ。

「俺としたことが、、。取り乱してしまった。すまない」


 「まあいい。そんなことよりあのさお前が言ってたゲーム楽しいな」


 「おう。そうだろ。今、こいつが強くてさ」


  いつも通り。そのいつも通りさに、若干の不安を覚える。俺にはいつも通りなんて言葉はまるで似合わない。いつも何かしらがあって、何かしらに巻き込まれ、何かしらを抱えてきた。俗に言う巻き込まれ体質である。

まあ、今日が平和なら何でもいいわ。




あれ俺フラグ言ってしまったよ。


「ーーーーーーーガラガラガラガラ」



「柊薫さん好きです。付き合ってください」

俺は可愛い声、まさに女神とも言えるその美声に愛の告白をされた。


「......はい?」



ハハッ。そりゃないぜ神様。

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