何度も僕らはくり返す
第32話 久しぶりな人たちと会う
「ひさしぶりだね。実くん」
「弁才天様!」
ここは俺の家の庭、相変わらず催しがされていて、俺のそばには弁才天様と、生田目さん、兄上、そして愛田さんがいる。
「貢献と戦ったんだろう?頑張ったね」
「いや……生田目さんが頑張っただけで俺はなにも……」
「でも、頑張ったんだろう。頑張ることが大切だからね」
弁才天様は柔らかい笑顔を浮かべながら相変わらず幼女らしからぬ包容力で俺をなぐさめてくれる。
「あれ?お前らどこ行ってたの?」
そこに無鱒名さんがビフテキを手掴みで食べながら現れた。
「貢献と戦って勝ちました」
「ええ!生田目ソレ、マジでいってる?」
生田目さんが相変わらず座った目でいうのに対して、無鱒名さんの目は見開かれている。
「じゃあ厳さんにも報告しないとじゃね?」
無鱒名さんが「ここ、厳さんの家だし」と付け足す。
その『厳さん』とは父のことだ。だからバレたら結構マズい。
「それはやめてください。無鱒名さん。誠陵夫人といわない約束なんです」
生田目さんが無鱒名さんのことをまっすぐと見つめながらいう。
それを無鱒名さんも負けじとまっすぐと見つめたのちに、いった。
「わかった。じゃあ、いわない」
俺は自分の口がポッカリと空いているのを感じた。
正直以外だった。
無鱒名さんといえばもっと軽薄で意地悪な印象があったからだ。
そんな俺の心境を察したのか、無鱒名さんが俺の方を得意そうな顔をして向く。
「少年。意外だっただろ?もっとクズだと思ってただろ?」
俺は正直思っていたことをいわれてしどろもどろしてしまう。
そんな俺のことを見ながら、微笑を浮かべ、無鱒名さんはいう。
「確かに俺は屑だ。この世でかなり邪悪な存在だ。だが━━」
こんどはわずかな笑みも消えて、真面目な面持ちとなり、続ける。
「約束は守る」
無鱒名さんの瞳は、三耽溺花最強の男は、強く、そしてどこまでもまっすぐだった。
だが、それでいて俺と話しているが、伝えたい相手は特にいず、自分に誓っている……ようにも見えた。
……なんかちょっと奥が深そうな人だな。
「ちょっと!みんな大変!忠くんがいない!」
愛田さんが高い声で叫ぶのと同時に俺はあたりを見わたしてみたが、確かに兄上はいなかった。
「ビフテキでも食ってんじゃね」
「そんな食い意地がはってるのは貴方だけよォ!」
「霞七子ちゃ〜〜ん!」
相変わらずの無鱒名さんに、愛田さんが一蹴して、和やかな雰囲気となった。
だが、それも束の間。
さすがにあんなことがあったあとに人がいなくなるのは心配だ。
弁才天様の提案で、みんなで手分けして探すことにした。
こうして、俺が、家の玄関を探しに行くと、そこでは驚くべきことが起こっていた。
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