第21話 目つきは印象作りに欠かせない

「こんにちは。三耽溺花の皆様。」

「おっ!忠じゃん。」

「こんにちは。誠陵さん。」

「ども。」


兄上が座った目を俺以外のみんなに向けて、礼儀正しいあいさつをする。


それに無鱒名さん、生田目さん、神母さんの順でそれぞれその人らしい反応をしていく。


だが、その直後、兄上の母さんと瓜二つな顔はというと、常時気分上昇中の無鱒名さんでもなく、平坦イントネーションの生田目さんでもなく、一番掴めない神母さんでもなく━━俺へと向いていた。


そして、兄上は口を開く。


「実。なぜここに。」

「えっ!ええと……」

「あの!父上には黙っていていただきたく!」


兄様は少し面食らったようだったが、すぐにいつものつまらなそうな表情へと戻っていう。


「別にどうでもいいが。」

「……はい。」


ああ、この人は、あの人たちは、こんな人たちなんだった。


俺は、父と兄のことを思い出し、やり場に困る気持ちにかられる。


なんで俺は、俺だけが、いつもこうなんだろう。


「忠〜〜。聞いてくれよ〜〜。君の弟、成長倒したんだって!」

「……成長って……あの六大妖の?」

「だから〜〜。愛のところでの弟子入り認めてあげてもいいかなァーって思うんだけど。」

「……無鱒名さん。個人情報です。」

「でも、それも色々あって……あー!!」


ペラペラと兄上にまくしたてる無鱒名さんを、俺らの秘密にさしかかったところで、生田目さんがたしなめる。

まぁ、無鱒名さんはそのことに全く気づいていなさそうだが……。


「はぁ……。して、僕に話とは……?」

「あ、あぁ、そうそう。」


相変わらず、俺のことを無視でいう兄上に、無鱒名さんが、人差し指を天井へと向けて声を張り上げる。


「忠くんにきてもらったのは、成長討伐の詳しくを話すのとォ〜。」

「それはあとでいいので、もう一方を教えてください。」

「はいはーい。これは重要なお話です。」


そういってから、無鱒名さんは少し間をおいた。


生田目さんと兄上が二人とも同時に常時座っている目を面倒くさそうに細めたのを、俺は見逃さなかった。


「一言でいうとね。六大妖が異常に発見されているの。」

「……!」

「安定感と不安定感とかの最上級妖も、もう三回以上も見られてんの。━━ここ一ヶ月で。」

「一ヶ月で?」


兄上が、俺と同じ藍色の瞳があらわになるほど、座った目を見開く。


「本当ですか!?」

「うん。ホント、ホントー。」


今までずっとうさんくさい笑い方をしていた無鱒名さんはその後一瞬にして顔から笑みを消す。


「俺も本気で喰ってくしかないなァ。」


俺は、この会議の数週間後になってもこの怖さが頭から離れなかった。

この、鬼のような眼光の怖さが。

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