第14話 こどもっぽいおとな

「やっと分かったみたいだな。」


後ろからよく響く、低い女声が聞こえてきた。

身構えて振り返ると、当然、あの女━━成長?━━がいる。

俺はとりあえず色々なことを聞いてみることにした。


「あ、あの、お前は本当に六大妖の成長なのか?」

「そうだ。」

「じゃあ、さっき出したのも呪語のろいご……?」

「そうに決まってるだろ。あたしは妖だぞ。」

「なんのために来たんだ?」

「まぁ、とりあえずこの学校をぶっ壊せとの命令だ。」

「えっ!?」


俺は、自分でもわかるほど素っ頓狂な声を出しながら驚く。


確かに、この学校が壊される危機についてもそうだ。だが、一番驚いたのはこの学校をことそのものについてだ。


六大妖、日本に何百年も前から存在していたとされる妖。


だが、その歴史の中で人々が姿を発見したのはほんの数十回。


一般人は無頓着に殺すが、祓い屋には攻撃しない限り何もして来ないため、をのぞいて奴らはほとんど祓い屋を殺していないことは、祓い屋の中では絶対常識だ。だからこの学校を壊すだなんて謎が深まる。


……いや、待てよ。コイツはさっき「命令」と言った。


「おい、成長。」

「どうした?」

「お前は誰に命令された?」


六大妖そのものは、祓い屋に危害を加えることはおろか、歴史ある祓いの高校を壊そうなど、思いつきもしないだろう。


だが、それが上で糸を引いている「誰か」がいたなら話は別かもしれない。


俺がどんな悪党がそんなことをしたのか自分でもうるさいほどに胸を鳴らしながら考えを巡らせていると、あっけない答えが返ってきた。


「う〜ん。教えなーい。」


今までの少し格好つけているような話し方とは一転、幼児のような話し方でそういった。


大人っぽい人がこういうことをすると、なんだか不思議な感覚に駆られる。


「まぁ、いい。じゃ、誠陵の坊ちゃん!」


そういうと、成長は目にも止まらぬ速さで、廊下へと駆けて行ってしまう。


「ちょっと!待てよ!おい!成長ォー!」


そういうと、成長は学校破壊のため、俺はそれを阻止するべく、走る。走る。走る。


長い廊下を、超えて階段を下り、また長い廊下を超え……の繰り返し。


気づいたら、俺らは実技のために、だだっ広く作られている校庭にきていた。


なお、俺は上履きのままだが、成長は

元々土足だったため、その心配はなかった。


俺は非常事態だが、どうしても確認しておきたいことがあったので、成長に聞く。


「お前、どうして校庭にきた?」


校庭から凄い呪語を放って、一気に学校を消し炭にするつもりか……?


色々なリスクを考え、手に汗にぎる俺の耳には本当に予想外の返答が入ってきた。


「え、どうしてだっけ?」

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