第7話 どこかで……

 俺は必死に叫んだ。少しでもこんな俺を弟子だと認めてくれている人の期待に応えるために。


 でも、俺の心を込めた大声とは裏腹に俺が祓語を唱え、出した祓術は、情けなく宙を舞い、消えてしまう寸前だった。

 ━━が!


 そのあと発せられた生田目さんの平坦な声に乗って、生田目さんの祓術がきた瞬間、一気に風向きは変わった。


 その、唱え方とは対照的に力強く、唱え方と同じく平坦に霊めがけて一直線に進む祓術が俺の弱々しい祓術を乗せて、一つの祓術となり、霊へとあたったのだ。


俺も、一瞬吐き気がしたが、なんとか持ちこたえた。


「ほら、大丈夫。全部うまくいった。」


 急に横からとてもやわらかい、やさしい声が聞こえた。生田目さんがこんな優しく話しかけてくれたのは当然初めてだ。

先程の吐き気が少しはやわらぐ。


 というか、この台詞、この声、これは昔どこかで━━


「聞いたことある。」


 俺は自分でも聞こえないくらい小さな声で誰にも聞こえないようつぶやく。

自分でもわけがわからないことをいっていると思う。

 でも、なぜか、つぶやかずにはいられなかったのだ。


「どうしたんですか?もう終わりましたけど。」

「あっ、はい!」


 生田目さんがさっきとは違った平坦かつ優しげのない声で俺にいう。


「でもなんでこんなところに住み着いていたんでしょうね。」

「たまたま来たんじゃないかい?」


 弁才天様と俺が話す。


「まぁ、妾は妖だからね。霊のこともアンタたちよりはわかると思うよ。」

「えっ!?それって━━」


 俺は、驚きのあまり質問攻めにしたくなったが、生田目さんが話し出すほうが先だった。

━━というか、それなら「弁才天」って苗字じゃなくてフルネームだったのか。


「まぁ、ともかく」


 生田目さんが座った桃色の瞳で俺を見つめる。


「私のサポートがあったからいいものの、あれじゃ、ちょっと困ります。」

「そうですよね。生田目さんもこんな弟子がいるってなったら恥ですしね……」


 申し訳なさで埋めつくされる俺の頭に、「いや」という声がひびく。


「私は心底どうでもいいんですけど、さんが色々言うと思うんですよ。」

「あの……それってもしかして、無鱒名魁むますなかいさんのことですか?」

「はい。」


 俺は驚く。なんでそんな凄い人が俺に対してとやかく言うんだ?

 首をかしげる俺に生田目さんはいう。


「まぁ、ともかく明日から修行してきましょう。」


 そう生田目さんがいう。無鱒名さんのことを心配しているのか、少しけわしく見える顔で。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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