第1話 ぜひ、モブに転生させてください。

 僕はアイドルやキラキラした二次元キャラクターが好きな普通の男子高校生だった・・・


 事件が起きたのは大人気の乙女ゲーム『恋する魔法学園』を買った直後に起きた。


 恥ずかしい気持ちになりながらも、女性ばかり並んでいるレジに並んだ。


「またのご来店をお待ちしております」


 やっと手に入れた喜びに、僕はスキップをしながら店を出た。


「ねぇ? あのトラック揺れてない?」


「ほんとだね」


 店の前にいた高校生カップルは前を走るトラックを見ていた。


 だが、浮かれていた僕はそのことに気づかなかった。


「おい、あれやばいぞ! 逃げるぞ!」


 彼氏が何かに異変に気づき彼女の手を引っ張った。


「おい、お前も逃げろ!」


 その声に気づき、視線を上げた時にはすでにトラックがいた。


 まさかトラックがゲーム屋に突っ込んで来るとは誰も思わないだろう。


 そのまま僕は意識を失い、17年という短い人生に幕を閉じた。


 事故の原因は車両整備不良と長期過労による居眠り運転だった。




「という感じでわしのミスでお主は亡くなったんじゃ! ほれ、骨が剥き出しになって、内臓が飛び――」


「やめんかい!」


 僕は再び目の前にいるおじさんを殴ると、彼はニヤニヤとしていた。


 気づいて目を覚ました時には、頭が寂しいおじさんに僕は抱きつかれていた。


 咄嗟に頬を殴り距離を取ったが、殴った相手がなんと神様だった。


 どうやら今いるこの空間は転生する世界を決める天国のようなところらしい。


 それから記憶が曖昧な僕は神様にプロジェクターに映し出された、事故当時の映像を説明付きで見させられて、今現在ってところだ。


「やはりお主のパンチは気持ち良いぞ!」


 どこか気持ち悪い、構ってちゃんのおじさんにため息が出てしまう。さっきから僕にちょっかいを出しては、殴り返すとニヤニヤして喜んでいる。


 本来神様は隣にいたカップルにトラックを突っ込ませて二人を聖女と勇者として、破滅寸前の国に転生させるつもりだったらしい。


 それがくしゃみをしたら、操作をミスして僕の方にトラックが来てしまった。


「それでお主は忘れていた記憶と一致したのかい?」


「えーと……ゲームを買いに行って、ウキウキしてたらいきなり叫び声が聞こえて――恋学! 恋学はどこ?」


 "恋学"とは大人気乙女ゲーム『恋する魔法学園』の略だ。


 僕はあのゲームを買った帰り道にトラックに轢かれて亡くなった。


「お主あのゲームが好きだったのか?」


「好きというよりずっと欲しかったゲームなんだよ! ずっと完売してて、生産されることになったら抽選は外れるし、たまたま当たったくじでやっと手に入れたのに……」


「ならその世界に転生してみるか?」


「えっ?」


「そのゲームはもう出来ないけど、その世界に行くことはできるぞ?」


 転生先を探していたが、まさかゲームの世界に行けるとは思いもしなかった。


「おじさん……眩しい……」


「誰の頭が眩しいんだ! ボケ!」


「いや、そこまでは言ってないですよ?」


 確かに神様の頭はこめかみだけしか髪の毛は残っていなかった。ツルツルして光り輝いているのは事実だ。


「ははは、わしの思い込みじゃったな」


 どうやら神様は心の中の声までは聞こえていないようだ。


「では、こっちのミスで死なせてしまったお詫びにその世界で誰に転生したいんだ?」


「転生するならモブでお願いします!」


「モブ?」


 おじさんはモブという聞き慣れない言葉に首を傾けていた。モブとは漫画やゲームに出てくるクラスメイトAや村人Aみたいな存在だ。


「その世界で何がしたいんだ?」


「キラキラした女性と男性を眺めていたいです。出来れば仲良く話してたり、楽しそうなところをずっと観察したいです!」


 僕はおじさんに詰め寄り、モブに転生したい気持ちを熱く語った。

 

「変わったやつじゃ――」


「お願いします!」


 僕はおじさんの手を強く握ると、若干引いた顔で僕を見ていた。むしろ殴られてニヤニヤ笑っているおじさんの方がおかしいと思う。


「ああ、ならクラスの縁にいるようなやつに転生させておこう。ついでに特典もつけておくからそのうちわかるじゃろう!」


 特典の内容は特に話していなかったが、無事にモブへ転生できるなら心残りはない。


「ありがとうございます!」


「では、新たな人生に幸あれ!」


 おじさんの後ろから光が差し込み、頭の輝きが増したところで僕の記憶は徐々に薄れた。


「あー、おじさんの髪の毛も薄かったな」


「おいこら! やっぱり薄いと思ってたんじゃないか!」


 何かおじさんが話していたが、すでに僕には聞こえていなかった。


───────────────────

【あとがき】


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