じつは実話です。その2 不思議なエレベーターの話

鎌倉のマンションに行ったとき、珍しいエレベーターに乗った。斜面を緩やかに昇る、横に動くエレベーターである。ごく普通のエレベーターホールから、ごく普通のエレベーターに乗ったのに、いきなりケーブルカーのように動くものだから驚いた。(というか感覚が“バグった”)と同時に、大昔の友達のOさんのことを思い出した。


小学1~2年の時お友達だった米屋の娘のOさんは、エレベーターに乗るのが好きだった。

おかげで、私は通学路にあるエレベーターにはすべて乗った。

通学路以外のエレベーターにもいっぱい乗った。

今のようにオートロックなどない時代だから、マンションのエレベーターは乗り放題だった。その代わり、管理人さんがいる場合が多かったので、そこをすり抜けるスリルというのも楽しんでいた。

良くないことである。

もちろん当時の本人たちも・・自宅があるわけでも用事があるわけでもないマンションのエレベーターに、勝手に乗ってよいものとは思っていなかったので、管理人さんと目を合わせないように気を付けたし、途中で乗り合わせる人がいると心臓がドキドキした。


その点、デパートのエレベータはいい。いつでも堂々と乗れる。

そのころ住んでいた吉祥寺の街を、東急、近鉄、伊勢丹、西武スポーツ・・・と乗り歩くうち、何度乗っても解せない不思議なエレベーターに出会った。

6階で降りた場合だけ、西方向から乗ったのに東方向に降りた感覚になるエレベーターである。

今では両開きのエレベーターなどもあるから、実際にあり得ることだが、昔はそんなものはない。

とはいえ・・これは怪談ではなく、明らかにただの方向音痴。

ただただ方向感覚が“バグって”いるだけのことなのだが、乗るたびに不思議で仕方がなかった。


今また、そのエレベーターに乗ってみたらどんな感覚になるのだろう。

西から乗って、無事西に降りられるのだろうか?


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