05.水とは美容のことである


 水。

 水は大切なものだ。



 え?何をいまさらって?



「でもね、軟水と硬水の違いは美容にも影響するんだよ!」



「お嬢様!布団の上で立って大きなお声を出すのはおやめください!!」



 アールに引きずり降ろされた。てへっ。



 さて、今回の議題は水による美容への影響です。

 欧州にはお風呂の入る習慣が薄い。全くないとは言わないが、日本のように湯につかるのではなく湯を浴びて流して落とすのが主流だ。あとは川にいって水浴びか。



 なぜか?

 硬水だと髪や肌が痛むからである。



 本当は、なぜか入浴は体に害であるという謎の迷信だったり、日本のように温泉がわきやすい場所とそうでない場所とか。湯を沸かす燃料の問題などと別の要因もいくつかあるがそっちは今回は割愛。



 硬水で顔や髪を洗っているとパサついたり軋んだりしやすくなる。

 カルシウムイオン・マグネシウムイオンが影響して起こるのだが、毎日の洗顔や汚れを落とすために湯を浴びるたびに、汚れは落ちているが痛めつけているのと変わらない。



 そこで私の今世のお母様。アイリス・マインズフィール侯爵夫人を巻き込んだ。

 いつの時代も女性の美容への興味関心は高い。なんだったら化粧品とそれによる収益につながる案件だしね。



 とはいえ、私がしたのは簡単。

 毎日の洗顔と化粧落としに使う水を、私が作った調整水にしてもらっただけ。



 小さな違いだけど、毎日やっていることだからこそ違いは劇的だった。

 肌のハリがものすごくよくなった時のお母様は小躍りしそうなほどだったもんね。



 とはいえ、調整水であっても元は蒸留水(美容に使う場合は精製水と言ったほうがなじみがあるかな?)、これだけで洗顔をして満足するとむしろ肌は荒れることになってしまう。

 


「あくまでも、肌に負担が少ない水なだけで保湿とかは一切ない水だからね」



 そう言って作ったのは芳香植物を蒸留することでとれるフローラルウォーターとそれを使った化粧水、あとは乳液。

 いやほんと、前世のネットすごいわー。本格的な化粧品は無理でも、お手製化粧水と乳液を作るぐらいの知識はいくらでも拾えたもんね!実際に材料から作るとなるとめちゃくちゃ苦労するけどね……。



 水と油を混ぜるための乳化剤がない?侯爵家の領地なめんなよ!豆の栽培くらいすぐよ!

 フローラルウォーターって何ですかって?植物を水蒸気蒸留すると手に入るんだよ!素人が中途半端な知識で作ろうとするとだめだね、失敗しまくったよ!



 あら失礼、侯爵令嬢なのに口調が崩れてしまったわ、オホホホホ(いまさら)



 正直、水の問題がなくても前世の知識がよみがえった時点で化粧には口を出すつもりだった。



 数々の創作物でも有名な亜鉛中毒を引き起こす白粉。

 それが実際に使われている世界だったし、そうと知っていて自分の肌に毒を塗るような真似はごめんだったからだ。



 日々の洗顔と洗体。化粧水の乳液を使ってお母様は美しなり、濃い化粧を淘汰してもらうためにもナチュラルメイクとして社交界で広めてもらった。あとは2つを商品化、侯爵家が持つ商人流通で流してもらえればいい。そう思っていたのだが、侯爵本人である父、グレイル・マインズフィールが専用の商会を作って私を開発の顧問の位置に据えると宣言された。売り上げの2割は私の資産になるとか。

 


 気が付けば個人資産がめっちゃ増えてました。あれぇ?

 ま、まぁ、お金があって困ることはないしいいことだよね!


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