水物語と水の賢者 異世界の水は硬水だった!?

大熊猫小パンダ

01.記憶は突然に


 彼女が神の啓示を受けた年齢。それは13歳のころだと記録に残っている。



 その日の彼女は、いまだ少女だった。

 貴族の令嬢として当たり前にいる存在でしかなった。

 決して頭が悪いわけでもないし、だからといってとびぬけてよかったわけでもない。容姿にかんしてもそう。



 その日まで彼女は本当に普通だった。

 いつも通りに朝に目覚め、専属の侍女から受け取った水を飲んだ時、彼女の世界は変わったのだ。


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「水がまずい」



「は、えっ!?」



 子供でも持ちやすいように、少し小さめに作られたコップに注がれた水を飲んで出た感想がそれだった。

 専属の侍女が私の発言で慌てふためき、どうすればいいのかわからないと混乱をきたしている。



 それはそうだろう。

 侯爵令嬢の私を起こして、いつも通りに水を差しだして渡す。別に変なものを入れてなどいないし、そんなことをすれば最悪の場合は自分の命にかかわるのだから。



 つまり、普段と何一つ変わらないにもかかわらずまずい、そう判断されたのだ。

 腐っても相手は侯爵家だ。気に入らない宣言一つでお付きの者の首など簡単に飛ぶ。あ、ちなみに私の父と母はべったべたに甘いので告げ口すれば多分飛びます。物理的に。



「んー、なんでだろう?」



 何度も言う。

 普段通りの水を飲んだだけで、まずいと感じたのは今日がはじめだ。今まで一度たりとも抱いたことのない、水の味がまずいという感想。そもそも、水の味なんて気にしたことがない。



「なのになぜ?」



 頭を抱えて首をひねる。

 


「もう一回飲んでみよう!」



「お嬢様!!」


 

 まずいと宣言された水。

 それをもう一度飲んでみようなどと言われて冷静でいられる侍女はいるだろか?いや、いないだろう。



 必死になって止めようとする彼女のことなど、自分の世界に入り込んだ私は気づかない。

 


 一口。そして二口。



 頭の中にスパークが走る。



「あぁ、そうか。私は……」



 気づいた。否、思い出したことで動きが止まった私から侍女がようやく水の入ったグラスを取り上げる。

 


「私、転生者だ」


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