第一章 ココ・ザ・バーバリアン編

第1話 狂戦士ココ

『ナ・ポリタン王国』は、この『ス・パゲテイ大陸』において珍しく穏やかな国民性を持つ、しかし、乱世においては非常に弱い国力しか持たない貧しい国である。

 その『ナの国』の国王『ヒマン・ダ・ムッチョリーニ』42歳は平和を望む優しき王である。

 海岸沿いに国土を構え主に漁業を生業とする民が多い中、『ココ・ドコデスノン』の両親は牧場を営んでいる。

 牛乳ばっかり飲んでいたせいか、『ココ』は同学年で一番背の高い14歳の女子生徒として学園では有名であった。

 背が高いだけなら問題はなかったのだが、整った容姿と破綻した性格の方で有名なのである。

 彼女より背の低い男子達は『ココ』のことを『バーバリアン・ココ』と呼ぶ。

『ナの国』にも一応、騎士団はいる…しかし、おそらく、いやきっと、『ココ』にタイマンで勝てる騎士はいない。


 ……

「ヒマだわ…」

 学園の窓際最後尾がココの席である。

 うすらデカいので前に座ると迷惑なのだ。

 やる前から特別枠だから席のくじびきとか、やったことない寂しい少女である。

『ナの国』唯一の国立学園中等部、2階の窓から流れる雲をホケーッと眺めている『ココ・ドコデスノン』

 縦に成長したため、手足は長いが胸の膨らみは皆無であり、それが悩みと言えば悩みで、他に悩むことも無い。

 そんな平和な学園生活が15分後に変わろうとは…。


「今日の授業はここまで」

 やっと終わったと大きなため息が、そちらこちらで零れる教室、その最後尾の机に、めり込まんばかりに、うつ伏せて寝ているココの頭をポンッと先生が軽く叩いた。

「ホゲッ…」

「ココ・ドコデスノン…よだれを拭いて付いてらっしゃい」

「なんで?」

「貴方にお客様だそうです」

「お客? どちらさん?」

「……付いてくればわかります」

 とりあえず、ハンカチでよだれを拭いて、先生の後ろをスッタラスッタラと歩くココ。

 無言で入りなさいと促す先生。

 コンコン…

「失礼します」

 相手の許可など待たずにドアを開けるココ。

「彼女ですか?」

 校長の前に座る身なりのいい男が校長に尋ねる。

「えぇ、ココ・ドコデスノン14歳です」

 校長が答えた。

「えっと…どちらさんでしょうか?」

 立ったままココが校長へ尋ねる。

「座りたまえ」

 校長がココに着席を促す。

 校長の横に座るココ、正面には身なりのいい男。

「初めましてココ・ドコデスノン」

「初めまして…」

「私はヒマン王の使い、『トマ・トアッカイ』ナの国、騎士団の団長だ」

「騎士団長…ですか?」

「ココ・ドコデスノン…キミの力を借りたい」

「はい…はいっ?」

 ココの整った顔がマヌケに呆ける。

「とりあえず…王宮へ来てもらえないか? ご両親はすでに王宮へ向っている」

「……えっ?」

「悪いのだが、今、説明している時間はない、馬車で説明させてくれ」

 助言でも求めるようにココは校長の顔を見る。

 無言で頷く校長。

 この学園の教師は日和がちなのかもしれない。


 半ば強引に馬車に乗せられるココ。

「では…簡単に説明しよう…ココ、キミを呼べと王宮占い師が言うのでね」

「占い?」

「あぁ」

「で?」

「うん?」

「それだけですか?」

「それだけだ…」

「クレイジーにも程がありませんか?」

「スマンとしか言えん…いや、あの占い師が急げ、急げ言うのでね」

「アンタ…事情も知らんと、私を? ソレッて誘拐に近くないですか?」

「スマンとしか…」

「その占い師…男ですか?」

「ん?」

「いや…ほらっ、男の場合…なんか不埒なことを…イヤーーー‼ でも…イケメンですか?」

「女だ…老婆だ…俺が入団したときからずっとババアだ」


「ババアか~」

「フッ…食うか?」

『トマ』は軽い笑みを浮かべココに駄菓子を差し出した。

 とりあえず貞操の危機はないようなので出された、お菓子を食うことにしたそうです。


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