第2話 イン・ザ・洞窟

『ぺの国』を出発して4日。

 ダレヤネン・ソーレ騎士団は件のネクロマンサーが根城にしているという洞窟の前でキャンプの準備をしていた。

「騎士見習い諸君‼ いよいよ明日、この洞窟に入る‼」

「おーーー‼」

 実戦経験乏しい騎士見習い、志気だけは無駄に高い。

 知らぬが仏というやつである。


 思えば、この4日間、ロクな戦闘もない平穏な旅路であった。

 小規模な山賊を討伐したこと以外は、スライムやら野良ゾンビが数体倒しただけである。

 訓練にもなりゃしない。


「今さらだが…ネクロマンサーは死人使いだ、夜間の警戒は怠るな‼ 5名体制で交代しながら休むように‼」

「はい‼ ダレヤネン騎士団長‼」


 そんなわけで夜も明けて…

「諸君、朝日が射した‼ では突入‼」

 ダレヤネンが腰の剣を高々と掲げ、ダレヤネンを中心に前後に5名を配置し洞窟へ入るインスタント騎士団。


 洞窟を進むこと1時間…

(変だ…ネクロマンサーどころかスケルトンの1体も出て来やしない…)

 ダレヤネンが洞窟に違和感を感じ始めた、そのとき‼

 ゴワンッ‼クワン…クワン…。

 ダレヤネンの兜に大きな衝撃が走り、洞窟内に金属音が反響する。

「グッ…何…を」

 ズブッ…グサッ…

 片膝をついたダレヤネンに次々と剣が突き刺される。

「き…貴様ら…?」

 倒れたダレヤネンに容赦なく剣を突き刺す見習い騎士10名。

「騎士団長ダレヤネン、我らは騎士見習いなどではない…モブ・デ・ゴザールに雇われたアサシンだ」

「ア…暗殺者アサシン…か…」

「モブ王から預かった言葉を伝えよう…貴様は武勲をあげすぎた…王国に2人の王はいらぬ…とのことだ」

「アッ…アグッ…あぐぁーーー‼」

 血を吐きながら目の前のアサシンの足首を掴むダレヤネン。

「はっ…放せ‼」

 足を掴まれたアサシンが狼狽え足を滑らせ尻を付いて倒れる。

「チッ‼ まだ動くのか‼」

 別のアサシンがダレヤネンの背中を剣で刺そうと短剣を構える。

「ナッ…ナックル…ナックルパンチをお見舞いするぞ‼」

 バチコーンッ‼

 うつ伏せに倒れたまま、背中に剣を突き立てられながら足を掴んだアサシンを引き寄せ強烈な一撃を喰らわせるダレヤネン。

「グブッ…」

 ナックルガードに覆われた鉄拳がアサシンの顔にめり込み、殴られたアサシンは事切れた。

「化け物がー‼」

 残ったアサシンが一斉にダレヤネンをめった刺しにした。

 洞窟に静寂が訪れるとダレヤネンの死体にランプを叩きつけ、死体に唾を吐くアサシン。

「行くぞ…大臣に報告だ」

 アサシン9人は洞窟を後にした。


「で…ダレヤネンは始末出来たのだな?」

「はい、それはもう」

 揉み手でモブ王に報告する大臣ズ複数形

 ドサッと玉座に深く腰を沈めるモブ王。

「プッ…ブワッハッバハハー‼」

 木の上に止まるハーピーが景気よく、まき散らす下痢便のような声で笑うモブ・デ・ゴザール。


「出る杭は…ということだな…」

「モブ王…打たれるでごっざ…い‼ いっ?」

 大臣が王の言い間違いを訂正しようとした瞬間、モブ王の斧が側近の脳天をカチ割った。

 血しぶきを上げ倒れる側近。

「おい貴様‼ 玉座の絨毯が赤いわけがわかっただろう?」

 モブ王に声をかけられた他の大臣が無言でコクリと頷いた。

「ブワッ‼ ブワッハっババハハハー‼」


 笑いながらズボッと大臣の頭から斧を抜き肩に担ぐと短い足でズカズカと寝室へ向かったモブ王。

 広いベッドには数人の女が微睡み微笑む。

 両脇に女を抱え、満足げにベッドへ巨体を沈めた。


「この大陸に王は俺だけでいい…」

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