第47話:決戦準備

 準備は四日で済んだ。というか、四日が限界だった。

 思った以上に皇帝は動きが早いらしい。早々にクリスから「侵攻が早まるかも」と連絡が来た。もしかしたら、クリスの洗脳が解けたことを把握しているのかもしれない。

 こうなったら時間との勝負だ。

 戦争が始まる前に、皇帝を倒す。これから起きる悲劇を止めるには、これを目指すしかない。


 オレは三日間、ひたすらメタポー狩りを行った。<超越者>のスキルを少しでも生かし、確実に古代種を仕留めるためだ。

 フォミナはエリアの手伝いだ。戦争が近いことを連絡してすぐに、国境付近が怪しい雰囲気になったので慌てて兵力を集めている。こちらはゲームよりも準備期間が短い。開戦したら、被害が大きくなる可能性が高い。

 色々と上手くいくことを祈ろう。


「じゃあ、準備はいい? 二人とも黙ってるのよ」

「わかった」

「謁見の間まで絶対に喋りません」


 流血の宮殿、謁見の間にオレ達の姿はあった。

 さすがにクリスを含めてザイアム周辺に集まるわけにはいかないので、ここを使わせて貰っている。


「うむ。二人とも上手く化けている。古代種には通用せんから、用心はするように」


 満足気に頷くクラム様。オレとフォミナはこの方に外見を変えて貰っている。

 とりあえず、クリスの部下に似せてもらった。それも上でもなく下でもない。ギリギリ、一緒にいてもおかしくない立場の者だ。クリスができる上司だったおかげで、そういう部下がいてもおかしくないらしい。おかげで何とか最初の関門はクリアできた。


「古代種討伐後、皇帝は死んだことにして政権を取る方は上手くいきそうか?」

「さすがに三日じゃ仕込みきれないわ。主要な部下も洗脳されてるかもしれないし、少しくらい混乱するのを覚悟でやるしかないわね」

「……悪いな」


 恐ろしい話だが、これしか方法がない。クリスのカリスマ性に期待しよう。


「フォミナ、準備はいいか?」

「はい。マイス君はどうですか?」

「オレも大丈夫。できることはやったと思う」


 オレは急いで集めた装備品を身につけている。

 先端に七つの宝玉が填まった七悪の杖、着ているのはクラム様の宝物庫にあった暗黒のローブという黒基調の服になった。また黒い服だ……。

 それと、先制攻撃用の閃光の腕輪に、魔力が底上げされる指輪を装備。殆ど休まずレベル上げをしてたんで、相当強くなった実感もある。 


 フォミナの方は基本的には変わらず、頭の髪飾りだけが新調された。

 様々な宝石が輝く小さなティアラが頭に乗っている。こちらは能力値上昇と、状態異常防止などいくつかの効果がある強アイテム、残光のティアラだ。


 オレとフォミナ、どちらも幻術で見た目が変わって新装備は見えないが、とにかく準備はOK。後は帝都に飛ぶだけだ。


「確認するよ。これからあたしのテレポートで帝都に飛ぶ。そのままどうにかして謁見の間まで行くから、そこにいる連中をマイスが無力化ね?」

「わかった。そこは任せろ」

「それから、皇帝……古代種だけはすぐに復活するだろうから、倒す、ですね」

「最悪、城に入れれば暴れて何とかするよ」

「……ほどほどに頼むわよ」


 とにかく城にさえ入れればいい。あとは強引にオレの力で古代種まで辿り着いて見せる。

 

「では、いくわよ。……本当にいいのね?」

「他に手段がない」

「私はマイス君についていきます」


 最後の確認とばかりに聞いてきたクリスに、はっきり答えると、彼女の方も覚悟を決めたように頷いた。


「武運を祈っておるぞ。妾としても、古代種の陰謀が潰えるのは愉快なのでな」


 クラム様のそんな応援の言葉を受けて、クリスが呪文を口にする。


「テレポート!」


 オレ達は三人揃って、帝都へと飛んだ。

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