ももくりさんねん、おっぱいは何年なの?
……僕、
話は今日の午前中まで戻る。
*******
「皆さん、
ざわついていた教室が一瞬にして静まりかえった。
先ほど知り合いになった
会話を切り上げ、教室の入り口に視線を向けた。
「今日はもう一人、転校生を紹介します」
担任のシスターが女生徒を教壇に上げ黒板にチョークで名前を書き始める。
「
二年B組の女生徒たちが一斉にどよめく、僕は周りの反応に驚いてしまった。
「めちゃくちゃ可愛くない!? 何だかモデルさんみたい……」
「背が高くて顔ちっちゃ!!」
「素敵、お姉さまって呼んでもいいですか?」
隣に座る美馬さんまで喜びを隠せない様子で壇上の康恵ちゃんに向かって大きく手を振っていた……。
「康恵ちゃん、こっち、こっち、シスター、ここの席が空いてます!!」
「ミス美馬、お行儀が悪いわ、神様はあなたの
担任のシスターに
康一もとい康恵ちゃんは僕に目配せしながら自分の席へと向かった。
へえっ、本当にあるんだな、絵に描いたようなお嬢様学校って……。
ただでさえ女の子初心者の僕には先程のおっぱい検査でも驚かされて、
面食らうことばかりなのにこれじゃあ先が思いやられるな。
だけど康一が無事で本当に良かった……。
朝の検査中に気絶して運び出されてしまったんだ。一時はどうなることかと思ったけど、にゃむ子さんからメールが来て、危機一髪のところを助け出してくれたのは自分の妹さんだって僕に教えてくれたんだ。
にゃむ子さんの妹さんが保険の先生だってことには驚いたけど絶体絶命のピンチに現れてくれて本当に助かった。
でもシスターが言っていた神様が見ているって何のことだろう?
あとで美馬さんに聞いてみよう。
「じゃあ授業を始めます、テキストを開いて。皆さん課題はやってきましたよね?」
「は~~い!!」
僕と康恵ちゃんを除いた女生徒たちが手を挙げた。
あれっ!? 隣の美馬さんの様子がなんだかおかしいぞ、
「大迫さんと三枝さんは隣の人に内容を教えて貰って……」
担任のシスターの指示で僕は隣の人に課題のテキストを見せてもらう。
英文を訳す問題だ、僕が通っていた高校よりかなりハイレベルだな。
進み具合が全然違うぞ、さすが都内でもトップレベルの女子校だ。
ふと気になって康恵ちゃんの様子を伺う、席は美馬さんとペアになっている。
だけど肝心の康恵ちゃんより教える側の美馬さんの様子がおかしいぞ、
英語のテキストを広げたまま何やら困り顔だ……。
「では、代表して課題を発表してもらいましょう、そうねミス美馬、答えを読み上げてみて」
「えっ!? 私が発表!! はっ、はい……」
急に指名されて慌てふためく美馬さん、さっきから一体どうしたんだ!?
立ち上がろうとしたが何故かためらう仕草、がたがたと椅子が音を立てる。
「……あ、あう、ええっとぉ」
明らかに様子がおかしい、顔は真っ赤でその表情はとてもうつろだ……。
もしかして!? 英語の課題が解らないのか、こちらの席から手元テキストが見える。
やっぱり課題のページの答えが空欄のままだ……。
「どうしました……。 ミス美馬、早く答えを発表してください!!」
担任のシスターから厳しい催促が飛んだ。
「あ、……ううっ……」
テキストを握りしめた手が震え、美馬さんがいまにも泣き出しそうな表情に見える。
どうしよう、何とかして助けて上げたいけど今の僕には何も出来ない……。
次の瞬間、不意に康恵ちゃんが動いた、課題のテキストを自分の手元に引き寄せると一瞬にして答えを書き込み、そのまま無言で美馬さんに手渡した。
「あっ、ありがとう……」
美馬さんが僕の席に微かに聞こえる小声で感謝の意を表した。
「もし私がヒーローならきみを助けることが出来たのに……」
すらすらと解答する彼女を康恵ちゃんが安堵した表情で見守っていた。
そうだ、僕はすっかり忘れていた、康一の良いところ。それは困った人がいたら
手を差し伸べずにはいられないという性分だ。
自分が
じっと見つめる僕の視線に気が付いたのか、こちらに向き直った思ったら、
自分の眼鏡のつるに指を掛け顔の前でレンズ部分を上下させておどけて見せた。
照れ隠しですぐにふざける癖は子供の頃からまったく変わっていないな。
「康一の馬鹿っ……」
僕の中で膨らむのはおっぱいだけじゃないんだ。
いつかあなたに伝わるといいな、花束のようなこの気持ちが……。
次回に続く。
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