帰ろう、懐かしいあの場所へ

息づくような描写で、どこか懐かしい田舎の風景を思い起こさせます。鳥取に行ったことがなくても、十分に感動する物語でした。

主人公の子供時分のシーン、子供ながらの可愛らしい思い込みの描き方が非常にお上手です。私自身は知らない土地の話でも「子供から見た世界」という普遍性に共感しまくりました。これだけで郷愁を感じさせられます。

郷愁系の小説って、つい退屈に仕上がりがちですが(これは私自身に前科あり)、ゾクっとするような暗喩が効果的に使われていたり、地の文に小粋な言い回しが多用されていたりと、さまざまな工夫で読者を飽きさせません。

非常に完成度の高い小説だと思います。

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