第3話恋愛部?

 任せろなんて言ったものの、どうすれば……。学校の授業中、俺はずっと直人に言われた相談のことを考えていた。でも考えたところで答えなんて出るはずがない。だって俺、彼女いないもん。


 それどころか、女子とまともに手を握ったことすらない。そんな俺が友人の恋を叶えてやることなんてできるはずもない。出来るなら、俺には今頃彼女がいる。つまり無理なのだ。


 どう考えても相談相手を間違えてる。そもそもあれは、相談なのか? 完全に直人の願望だったんだけど。あいつは俺のことを神様かなんかと勘違いしてるのか?


 はぁ……。考えてもわからない問題に頭を悩ませている時間ほど苦痛なものはない。学校のテストだってそうだ。いくら考えても答えなんて出やしないのだから、考えるだけ無駄だと思ってしまう。


 俺がくだん柏崎かしわざきと友達、もしくは知り合いだったりしたらやりようがあったかもしれない。でもそうじゃない。俺と柏崎は赤の他人で、そんなやつと直人をくっつけることなんて不可能だ。


 気がつけば六時間目の授業も終わり、担任が帰りのホームルームでどうでも良いことを話していた。もうこんな時間か。無駄だと思うけど、一応顔ぐらいは見てみるか。


 もし柏崎とやらの顔があまり可愛くなかったら……。とかものすごく失礼なことを考えるが、直人が一目惚れしたんだからそれはないか。


 帰りのホームルームが終わると、俺は億劫な気持ちを抑え込み隣のクラスに向かう。隣のクラスもちょうど帰りのホームルームが終わったところらしく、沢山の生徒がぞろぞろと教室から出て行く。


 もしかしたらもう行っちゃったかなと不安に思いつつ、俺は教室から出てきた知り合いに柏崎のことを尋ねる。


「あ、広樹! ちょっと良いか?」


「ん? なんだよ刀鬼。俺今から部活なんだけど」


「ちょっとだけだから」


「……ちょっとだけだぞ」


「気持ち悪い言い方すんなよ!」


「はは! それで、なんだよ?」


「このクラスに柏崎って女子生徒いるだろ? どこにいるか教えてくれないか?」


「柏崎……? あぁ、それならほら。あそこで喋ってる奴だよ」


 広樹が指差した方に顔を向けると、ボブヘアーで地味めの、だけどとても可愛らしい女子生徒がいた。


「ありがとう。引き止めて悪かったな」


 柏崎を見つけた俺は、広樹を解放すると怪しくない程度にうろちょろとして様子を伺う。いや〜無理だって絶対。だって釣り合わないもん。主に顔が。普通に諦めろとか言うか。でも何もしないで諦めろなんて……。


 意味もなく隣のクラスの前をうろうろしながらたまに柏崎の方に視線を泳がしていると、なんだかすごくキモいことをしている気がして、俺はその場から立ち去る。


 意味もなく校内を徘徊して、時折う〜んと唸り声をあげてみたりして、はたから見たら完全に不審者だ。そんなことをしていると、普段来ないような場所まで足を運んでしまった。


 あまり人目につかない、この高校に入学して一年以上経つ俺でさえ数回しか立ち寄ったことのない場所。

 そんな場所に、光明とも思えるような教室があった。通常なら一年A組とか書かれている札のところに、「恋愛部」と書かれた札を掲げてる奇妙な部室があったのだ。


 なんだこの怪しい部活は……。こんな人目のつかないところで部活なんかやってるのか? でも明かりはついてるから、人はいるんだろう。近くには、「あなたの恋を助けます」と書かれた怪しいポスターも貼られている。怪しいし胡散臭い。でも……!


 俺はわらにもすがる思いで、その教室の扉を二回ノックする。

 すると中から綺麗な声で。


「どうぞ」


 と返ってきた。なので俺は、おもむろに扉を開けて中に入る。そこで俺は、驚愕からか声が出なくなる。

 だってそこにいたのは、俺のクラスの……。


「お、お前は……!」


 驚愕の声を漏らすと、あちらも俺の顔を見て。


「あ、あなたは……!」


 同じような反応をする。

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