第30話:俺の彼女は天使なんだ。

姫が拳銃で撃たれて以来、大学からの帰りはブッダーが付き添っていてくれた。


まあ、ある意味コスプレしたゴスロリ女と、奇妙な仏像の仮面を被ったやつは

目立ちすぎるから・・・姫とブッダーの周り、半径5メートル内に、民衆は

近寄らなかった。

そんな日々が平和に続いて、はや一週間・・・なんつうか姫にささやかながら

変化が現れ始めた・・・ささやかでもないんだけど。


やっぱり姫は変だ。


今朝のことだよ。


いつものように姫が二階から降りてきたんだ。

俺は自分の目を疑ったね。

なんといつもパンツしか履いてない姫が・・・パジャマなんか着てるじゃん。


「え?・・・うそだろ」


で、おまけに俺に挨拶したんだ・・・いつもはブスッとして挨拶ひとつ

したことないのに・・・機嫌悪いくせに。


「ツッキーおはよう」


「お・・・おはよう・・・」

「え?おはよう?・・・」

「姫・・・へんなウイルスに感染してないか?」


「何言ってるの・・・・ウイルスになんか感染してないから」


「お前の方が何言ってるんだよ」


「姫・・・おかしいよ、おまえ・・・」


「おかしくないよ・・・変なツッキー」


やっぱり、おかしいだろ・・・姫は変わった。


ある日、姫が大学から帰るって時刻に、ブッダーから用事ができたので

ツッキー殿、姫のことをお願いするでござるって連絡が入ったので俺は、

今、姫と最寄りの駅にいるんだけど・・・。


ちょうど下校時間・・・ついこの前まで姫が通ってた付属高校の新入生の

女子たちがホームで賑やかに騒いでいた。


「お〜新入生か?・・・キャピキャピだな・・・」

「いいな、初々しくて・・・」


「ツッキーダメだよ・・・よそ見しちゃ」


「なに?・・・新入生の子達がちょっと目に入っただけだよ」


「私だけ、見てて・・・」


「たってさ・・・普通に道歩いてたって女性なんて普通に目に入るだろ・・・

いちいち目をふせて歩いてたら変だし、危ないじゃん」

「つうかさ、少しくらいの目の保養、許せよ」


「ヤだ・・・」


「ヤだって・・・はっきり言うね」


「どうせ、俺が浮き気心出したら、殺すって言うんだろ?」


「なに、言ってるの・・・殺すなんてそんな怖いこと・・・」

「ツッキーがもし浮気なんかしちゃったら、私、死んじゃうからね」


「は?・・・なに言ってるんの?」

「俺、浮気しても殺されないの?」


「殺したりなんかしないよ・・・そんな言葉,クチに出すだけでも怖いよ・・・」


「やっぱり、あれだな・・・背中に羽が生えてから、おかしくなってきてるな」


「なにが?」

「私、ふつうだよ」


「普通じゃねんよ・・・違和感ありありだわ」


「今朝だって、朝、目があったら、俺に向かって《おはよう》」

って言ったんだぞ・・・おはようって・・・普段、ろくに挨拶もしなかった

くせにさ。

しかも、いつも朝はブスッとしてるくせに・・・」


「それに、二階から降りてきた時も、ちゃんとパジャマ着てただろ

いつもパンツしか履いてないのに・・・」


「笑顔でおはよう〜なんて言うから部屋の中がパーっと明るくなったわ」


「だって・・・挨拶も身だしなみも礼儀でしょ・・・それに恋人に

挨拶して、なんでダメなの?・・・」


「やっぱりおかしくなってきてるよな、おまえ」


「おかしくなんかないです」


「い〜や・・・絶対おかしい・・・調子狂うよ・・・」

「どうなっちゃってるんだよ」

「絶対、羽のせいだよ・・・」


まあ、前みたいに暴力的で猟奇的な姫を見てるとハラハラする時もあったけどな。

マイルドになって、いいのかなって思う反面、もの足りない気もする。

姫はまじで天使になっちゃったのかな・・・。


(背中の羽とったら、もしかして前の姫に戻るんじゃないのか?)


そう思って俺は姫と家に帰ってからブッダーを呼んで相談してみた。


「あのさ・・・姫の背中の羽、取れないのか?」


「まあ、外科手術で取れないこともないでござるが・・・」

「現にそれがしの星でも背中の羽が邪魔だって言うことで手術して取ってしまう

ポルトボヌールもいるでござるが・・・」


「それだよ・・・なんかさ、最近、姫がおかしいんだ・・・性格が妙に

マイルドになってきてるって言うかさ・・・」


「で?・・・姫の羽を取ってしまおうと、そういう考えでござるか?」


「羽とったら、もとの性格に戻るんじゃないか?」


「なるほど、理屈でござるな・・・でも、それは物理的処置と言うだけの

ことであって羽を取ったからといって、性格が元にはもどるとは限らないござるよ」


「え?そうなの?」


一度、天使になってしまった姫が悪魔にでもならない限り無理でござろう」

「考えが、甘いでござるよ、ツッキー殿・・・」


「よいではござらぬか・・・性格が柔らかく優しくなったのでござろう」

「元にもどせなどと、贅沢でござるよ」

「実は、姫は幼少の頃、事故に遭遇する前の姫にもどったのかもしれないござるな」

「元々、姫は心優しい乙女ではなかったかと思うでござるよ」


「今が、本当の姫でござろう?」

「ちゃんと受け入れてやるのが恋人の務めでござるよ、ツッキー殿」


「そうか・・・そうだよな・・・俺、こだわりすぎてるのかもな」


説得力あるよなブッダーは・・・。

そう言われたら納得するしかないわけで・・・現状を受け入れるしかないかな。


そして満月の夜・・・。

姫は俺の部屋にやってきた・・・のはいいけど・・・いつもみたいに

「ツッキーエッチしよう」って迫っても来ないで、ちょこんと座ったまま

モジモジしながら俺を見てるじゃん。

しかもパンイチじゃなくて、ちゃんとパジャマ着てるし・・・。


「なに?・・・エッチしに来たんじゃないの、姫」


「私のクチから、そんなこと言えないよ」

「ここに来るのもドキドキで・・・でもムラムラが止まらないし・・・」


「ドキドキって・・・うそだろ?・・・新婚初夜じゃあるまいし・・・」


「ツッキー・・・ふつつかな私だけど、これからも、よろしくね・・・

ずっと私の恋人でいてね」


「お〜い・・・いよいよ新婚初夜だな」

「何々、あらたまっちゃって・・・いつもみたいにエッチしようって来いよ」

「他人行儀だよ」


「だって・・・」


「俺は姫の恋人だよ・・・これからもずっと恋人だよ」

「なんか、変な雰囲気だけど・・・まあいいか・・・これはこれで、

新鮮でいいか・・・」


俺の彼女は異星人のDNA持ってて不死身で、でもって天使って、そんなこと

前代未聞だよな。


「あの〜・・・あのね・・・」


「なに?」


「あの・・・せ、せ、正常位?だけど、羽のせいでできなくなっちゃったね」


「え?、あ〜そのこと・・・」

「ああ・・・そうだね」

「うん・・・まあ、もう前ではできなくなっちゃったけど、でも姫の羽を

見ながら後ろからするのも、まじ天使とやってるみたいでけっこういいかも・・・」


「ま〜やらしい・・・」


「今更、なんだよ・・・最初の満月の夜の時は、もっとエロかったぞ」

「狂おしいくらい誘惑されたからな・・・」


「そんなことないから・・・」


「そんなことあるの・・・いいから・・・おいで・・・」


「ツッキー・・・愛してる?」


「ああ・・・愛してるよ、誰よりも・・・世界一、宇宙一愛してるよ・・・」


「ハグして・・・」


「もちろん・・・ハグもチューもするし、おっぱいも、いっぱい舐めちゃうぞ」


「おっぱい舐めるって・・・ほんと・・・ツッキー、やらしい」


「あのな〜、どのクチが言ってんだよ・・・まったく・・・」


つづく。

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