第08話 クォークの休日



 2年後の世界でレプトとクォークの命を奪ったのは、ブルターニュ帝国に雇われた魔術師だった。


 同じパーティーの仲間だったから、簡単に毒を盛られてしまった。


 だから、レプトはとくに帝国の動向に目を光らせている。



 魔族との戦争で活躍する国の代表、勇者。


 勇者の活躍が国の発言力を高める。


 自国の勇者が活躍できるよう、他国の勇者を蹴落としてでも舞台を整えようとする各国。


 そんな政治的な思惑により、クォークは殺されてしまった。


 クォークに、勇者になるなとは言えない。


 だからレプトは、必死にクォークの日常を守ろうとしている。




     ◆




 レプトたちは、帝国の工作員を罠にはめるための準備を進めていた。


「逃げられた!」


 そう告げる声が、カジノの地下に響いた。


 優秀な工作員だったようで、まんまと見失う結果に終わった。




     ◆




 レプトはここ数日、姿を消した工作員を警戒しカジノ通いは止め、クォークを影から護衛することに専念していた。


 クォークの生活サイクルは固定されている。


 丸1日剣術道場で鍛える。


 次の日は魔獣討伐に出かける。


 その次の日は休日にする。


 2日身体を動かして、1日休むことを繰り返している。



 この日は休みで、道場の後輩と街を散策した後、軽食屋で休憩していた。


「先輩。どうしてあんなダメ男と別れないんですかぁ?」


 後輩は、誰もが思っていることをストレートに聞いた。


「みんなが言うほどダメじゃないよ」


「先輩が毎日お金渡してる段階で、ダメダメじゃぁないですかぁ?」


「食費だからいいの」


「そのお金でカジノに入り浸ってるんでしょ?」


「私は料理できないからさー、レプトが作る美味しいご飯を食べられるのが幸せなんだー」


 クォークにしてみれば、この手の話題は聞き飽きていた。


「それに、レプトってすごいんだよー」


 クォークは頬を赤らめながら、


「ベットの上では負けっぱなしなんだー」


「えーっと……」



 軽食屋を見渡せる場所に隠れているレプトに、二人の会話は聞こえない。


 それでも、クォークが赤面している様子は見て取れた。


(恥ずかしがる姿は可愛いんだよな)


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